【2017年アニメ業界セミナー総集編②】(株)マッドハウス 「TVアニメ『ACCA13区監察課』 アニメーション制作について」

学校からのお知らせ

2018.01.09

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『ACCA13区監察課』制作のマッドハウスが来校
制作現場の最前線解説はもちろん、業界への疑問・質問にも回答!

2017/7/23(土)、TVアニメ『ACCA13区監察課』で監督を務めた夏目真悟氏、キャラクターデザインを担当した久貝典史氏、アニメーションプロデューサーの株式会社マッドハウス 福士裕一郎氏が来校。『ACCA13区監察課』制作の裏側を解説する第一部、在校生からの質問に答える第二部の2部構成でセミナーが開催されました。

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前作『ワンパンマン』でも制作を共にした3人。「『ワンパンマン』制作時に、『ACCA13区監察課』の話があり、“次も一緒にやりましょう”となって。お金を集めるのは製作委員会幹事、スタッフを揃えるのはアニメスタジオ、つまりアニメーションプロデューサーの仕事ですね」と福士氏。
今回、初めてキャラクターデザインを担当した久貝氏は、「原作の雰囲気は大切にしつつも、キャラクターを魅力的に、アニメらしくしていく。つまらない絵にならないように気をつけました」。もともとアクション系アニメを得意とする久貝氏にとって「会話劇の今回は、少し難しかったですね」と苦労も覗かせます。夏目氏は、「最近はデジタル作業が多い背景も、今回は手描き。音楽もジャズをメインにするなど、ターゲットを意識して世界観を作り込みました」。また、「第1話のシナリオ、絵コンテはすごく重要。そこである程度、ストーリーの背景や世界観を伝えなくちゃいけませんからね」と話されました。

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少しの休憩を挟んで、第二部では、在校生からの質問に本音も交えて回答くださいました。「監督として必要なものは?」といった質問に夏目氏は「自分の個性やカラーを理解して、どんな作品を作りたいのかをしっかり持つこと。興味のあるものは何でも、見て、聞いて、体験してみることが大切ですね」。久貝氏には、「描きづらいキャラクターの攻略法は?」など、アニメーターとして直面しそうな具体的な質問が。「線の多いキャラは正直、苦手ですが、フィギュアを買ってきて、立体を確認したり研究したりしますね。最後は根性で乗り切りますが(笑)」。また、「今後、役立つスキルは?」との質問に福士氏は、「コミュニケーション能力はとても大事。仕事上、必要なのはもちろんですが、そういう人のほうがチャンスをつかみやすいですよ」とアドバイスをくださいました。

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セミナー後も、楽屋での作品指導、質疑応答が続きました。

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何がやりたいかを明確に持って
興味のあることには何でもトライして

アニメーター・演出家
夏目真悟氏(写真中央)

ジャンルに関係なく映画や小説、興味のあるものをたくさん見てほしいですね。僕の場合、ゾクゾクしたり、気持ちよかったり、カタルシスを感じたり…心が動かされるかをひとつのポイントに見ています。自分が作るものも高揚感やグルーブ感を得られるものにしたいから、そういったものを再現するためのカット割りやシーン作りに役立てています。
社会に出てひとつのプロジェクトに関わると、自分の時間はなかなか持てなくなります。時間がある今のうちにセンスを磨いてください。こんな作品や映像を作りたい、こんなアニメーターになりたいなど、やりたいことがハッキリしていれば、たとえば旅行に行ったとしても、センスを磨くために役立つ何かを自分で発見できると思いますよ。

得意や長所を自覚して
自分を信じて描き続けてください。

アニメーター
久貝 典史氏(写真右)

僕がアニメ業界に入ったのは25歳のときで、実は人より遅かったんです。“自分は人より遅れている”という危機感を原動力に、ひたすら書きまくりました。書けば書くだけ、確実にうまくなります。あとは、“自分には何かある”という自信や思い込みも大切ですね(笑)。若いうちは技術が伴わない場合も少なくない。それでも活躍する子は「自分の武器」を持っているように思います。短所を潰すより、「これが自分の武器だ」と言えるくらい長所をのばすほうがいい。そのためにも自分の得意なこと、人より上手いところは何なのか、早い段階から見極めてください。くじけそうになったら初心に戻って、「自分はどうしてアニメ業界を目指したのか」、その熱量を思い出して頑張って欲しいです。いつか一緒に仕事ができればいいですね。

プロデューサーでも、アニメーターでも
与えられた仕事にプラスの気遣いが大切

株式会社マッドハウス
アニメーションプロデューサー
福士 裕一郎氏(写真左)

プロデューサーとしての仕事のやりがいは、才能のあるいろんな人たちと一緒に映像づくりができることです。作品単位で、監督などアニメの根幹となるスタッフと共に仕事ができるのは、毎回、おもしろいですね。プロデューサーとして必要なスキルは、気が利くこと。アニメ制作のさまざまなパートの人と関わる立場だけに、人間力が問われます。今何が求められているのか、それに対して自分はどう答えるのか、さらに、その答えにプラスアルファできることも大切です。どんな仕事でも言われたことだけやればいいというのはダメですね。また、この業界は横のつながりが強いです。今の友だちと将来、一緒に作品を作るなんてこともあるかもしれません。学生のうちから切磋琢磨できる、いい仲間をたくさん作ってください。

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