時代を超えて響く 四つ打ち盆踊り「テクノ盆」

2014.12.2

CATEGORIES:学校・教育 ,神戸 ,音楽

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さて、夏の思い出を振り返るシリーズ第2段は、8月25日に開催されたホテル北野プラザ六甲荘と神戸電子合同の夏祭り「テクノ盆」。毎年恒例のイベントなんですが、今年も盛り上がってくれました。神戸の夏の締めくくり、僕はこれだと思っています(笑)。もう冬になってしまいましたが、来年の告知も兼ねて「テクノ盆」の様子をお伝えします。

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まずは軽く盆踊りの歴史から。盆踊りはそもそも仏教行事のひとつ。平安時代の僧・空也上人が広めた「踊念仏」に起源をもつともいわれています。踊念仏は、鉦や太鼓を鳴らし、踊りながら念仏を唱えるというもの。念仏を覚えやすく踊る楽しみがあったため、全国的に大ヒットしたそうです。こうした踊念仏が、念仏より踊りに重点をおくことで「念仏踊り」が生まれ、さらに庶民の自治能力が高まるにつれて、次第に庶民のエンターテインメントとしての「盆踊り」が確立したそうです。
高らかな祭り囃子に、腹に響く太鼓の重低音。きらびやかな提灯の下、集団で踊ることのエクスタシー……今風にいうと、盆踊りは“和製のクラブ”といったところでしょう。音に合わせて踊り熱狂していた光景を思い浮かべると、庶民が日頃のストレスを発散する場になっていたのかもしれません。
しかし、明治維新後の脱亜入欧にともなって、盆踊りはそのエネルギーの大きさから警察の取り締まり対象になります。今も昔もお祭りにはお酒がつきものですし、娯楽が現代よりもずっと少なかった時代ですから男女の出会いの場でもあったのです。それが風紀を乱すということで目をつけられたんですね。取り締まりが強化されるにつれ、和製のビートは近代化の波とともにエンターテインメントの表舞台から姿を消し、各地方でひっそりと踊り継がれるだけになってしまったというわけです。昨今のクラブやダンスを規制する風営法問題と通じるところがあります。
けれど、今でも晩夏を締めくくる盆踊りの活気や、見よう見まねで踊る子どもたちの笑顔を見ていると、盆踊りのメンタルは日本人の心にしっかりと刻み込まれているのではないかと思います。

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「テクノ盆」はそんな伝統的な盆踊りの最後に、DJブースを設置し、クラブミュージックさながらの祭り囃子で踊るユニークなおまつりです。形骸化していった盆踊りを、電子音楽と最新の音響技術でリエンジニアリングした祭り囃子でもって、いまの若い人たちにも親しんでもらえるようアレンジしています。毎回、電子音楽に和楽器を合わせるのですが、今年は大太鼓、三味線、笛の生演奏を組み合わせました。古今の橋渡しとなるようなミックスでしたね。電子音による四つ打ちビートと、大太鼓によるヘッドビートとが、音の衝撃波となって身体にビリビリと伝わってきました。晩夏の暑さも加わって、会場はあっという間に熱量を帯び、参加した学生は当然のことながら、お越しいただいた年配の方々も自然と身体が踊り出しているようでした。もちろん僕も踊りましたよ。

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来年もさらにパワーアップして帰ってくることを約束しましょう。今年を逃した皆さん、ぜひお越しください!

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生田神社の夏祭りで感じた、音楽とお酒のパワー

2014.11.12

CATEGORIES:学校・教育 ,神戸 ,音楽

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すっかり秋の装いになりましたが、記憶の整理も含めて夏の思い出を振り返ってみます。今夏、思い出深い出来事のひとつが8月に開かれた生田神社の夏祭り「大海神社祭(たいかいじんじゃさい)」です。

神主さんより、神戸電子で「夏まつりのサウンドステージを受け持ってもらえませんか?」とお声がけいただき、サウンドテクニック学科の教員、学生とでお受けしました。生田神社さんとは、僕が代表世話人をしている「音楽のまち神戸を創る会」の事業の一つ、「市民が街中で音楽を楽しむ」活動 ‘078’ を神社内で開催させていただいてからのご縁です。078では、当初「境内」での演奏と聞いていたのですが、フタをあけてみたら舞台はなんと「本殿」。雅楽上演の前に、アンビエントな電子音楽を奉納として響かせました。

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生田神社は神戸という地名の由来として知られています。日本書紀にも記述が残る由緒ある神社で、ふだんは静かで厳かな空気に満ちています。しかし、この夏祭りに限っては、静から動へ、およそ神社の催しとは思えないような盛り上がりを見せます。境内に音楽ステージやDJブースが組まれ、ジャズ、声楽にロック、アイドルユニットによるライブやダンスなど、さまざまな催しが続きます。規制の多い日本の都市部でこれだけの音量を許容し、広く若者文化を受け入れている神社はそうそうないでしょう。さらに、日暮れからは夜店ブースが開き、神戸・灘の蔵元である剣菱酒造や神戸ワインをはじめ、地酒がずらっと並びました。

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アッパーな電子音が響く本殿前で踊るダンサーの姿、お酒を片手に境内で沸き起こるコール&レスポンス……神社であることをつい忘れてしまうような盛り上がりを見せます。しかし、古来より縁日には芸能の奉納が付きものであり、“人が集まる場をつくる”という意味において、神社はオーガナイザーのような存在だったのでしょう。そこでは、笛や鉦の音はもちろん、音頭にあわせて“舞い”があり、お酒で神様を迎えたわけです。人が集まる場所をつくるための手法はたくさんありますが、あらためて“音楽とお酒”の力、そして日本古来のお祭りの魅力を感じました。

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さて、神戸電子は今回、3日間にわたってサウンドステージを任せていただけました。ステージの設営から音響機材の調整、運営の進行まで、サウンドテクニック学科の学生が精一杯の力を発揮してくれたように思います。やるからには、毎回、音の解像度にこだわった音出しをこころがけていますが、今回もオーディエンスの皆様、一様にそこを評価するお言葉を頂きました。今回サウンドステージを任せてくださったのは、このこだわりへの信頼があってこそ。降り止まない雨や突然のトラブルにもめげず、学生たちも素晴らしい“奉納”ができたのではないでしょうか。

生田神社の方々も喜んでくださったようで、すでに来年の続投要請も。今年以上に、壮観なお祭りになるよう頑張りたいと思います。   

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『 DTMマガジン 』記事掲載 サウンドデザインの可能性

2014.8.17

CATEGORIES:学校・教育 ,音楽

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『DTMマガジン』の2014年6月号に、昨年末、本校で行った講座「サラウンドセミナー」の様子が掲載されました。サラウンド音響デザインの業界を牽引する第一人者のkatsuyuki setoさんが、さまざまな業界人と対談するという連載企画です。今回は、本校での講演の様子を取り上げていただきました。編集者である萬健一郎さんと僕も参加し、今後ますます面白くなる「サウンドデザイン」の可能性について対話した内容を少しご紹介しますね。
setoさんは「3Dサウンドデザイナー・プロデューサー」の肩書きをもつ方。「音のデザイナー」です。アーティストのように自分の感情や感覚を表現するために音楽を創造するのではなく、「誰に伝えるのか」「どのようにすれば伝わるのか」といった設計をしながら、音楽をつくります。レコーディングやミキシングなど制作の部分においては、いわゆるミュージシャンやアーティストと同じです。しかし、ビジネス・モデルが異なり、setoさんはCDやWeb上で音楽を販売して収益を得ているわけではありません。クライアント、要するにつくった音を買ってくれるお客さんがいます。
たとえば、レストランやバーに「こんな音楽を流したい」という要望をもつクライアントに対し、そのイメージを形にするのがsetoさんのお仕事です。もちろん、お店にやって来た人は、「katsuyuki setoがつくった音楽が流れている」とか「サウンドデザインに力を入れているね」なんてことは思わない。けれど、「このレストランはなんとなく落ち着く」「このバーは上質な雰囲気だね」といった感覚的な“心地よさ”を受け取るはずです。
「いかに心地よく時間を過ごせるか」。これは21世紀の生活にとって大きなキーワードであり、これからの音楽業界においても、重要なことだと感じています。setoさんのお話によれば、東京の駅では、ラッシュ時の殺伐とした時間帯に鳥の声が流れるそうです。しかし、朝から晩まで同じ音が流れ、まだまだ発展途上なのだとか……。setoさん自身が手がけられた最近の仕事では、時間帯や季節によって音が変わる緻密な仕掛けを施したそうです。とても素敵なアイデアだと思います。
今後、都市部での人口は増加し、人口密度は高まり、今よりさらに車や電車の騒音があふれ、音に対する感覚はセンシティブになっていくと思います。しかし、都市の中において、建築やグラフィック、プロダクトデザインなど、視覚・触覚を刺激するデザインが重要視されつつあるのに対し、聴覚に対するデザインはまだまだ意識されていません。
その意味で、「今まで音楽というのは、エンターテインメントしかなかった」というsetoさんの言葉が印象的でした。建物や空間をデザインする人が、音の力を理解し、配慮のゆき届いた環境をつくるためにサウンドデザイナーに仕事を依頼する。これまでの音楽の領域を超えたところに、社会の“心地よさ”を一歩前進させる力があるように思います。
日常の“心地よい”をつくる、サウンドデザインの可能性。僕はもちろん、学生たちも心を動かされたのではないでしょうか。

★DTMマガジン
http://www.dtmm.co.jp/
★katsuyuki seto
http://katsuyuki-seto.com/
 
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