いよいよ今春スタート!新コース「Webエンジニアコース」の可能性をさぐるロングインタビュー 中編

2015.12.31

CATEGORIES:国内 ,学校・教育 ,神戸

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さて、前回に引き続きWebエンジニアコース教員との対談。今回は中編となります。教員や僕たちのなかでも「あんなふうにしたい」「こんなふうにしたい」とワクワクが止まらない新コースへの展望。今回は、日本の雇用形態を脱するあたらしいビジネスモデルにも踏み込んだ話題が飛び出します。

▼エンジニアリングの力で、今までになかったようなアイデアを具現化していく

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—:「まずははじめてみることからスタートする」、リーンスタートアップというお話が出ましたが。

横山:そうですね。1割の完成度でもいいから見せてほしいんですけど、学生にリーンスタートアップについて教えるときにこだわりたいのが「決してアクセルを踏むな」ってことですね。日本だと、プロジェクトの進行に関してアクセルを踏みたがる大人が多いんですよ。1、10、100、1000……と言った具合に、一歩ずつ正しく成長していければ、最終的に放っておいても成功するんです。しかし、友達に見せて満足しているところに、いきなり「じゃあWeb上で公開して、10000人に向けてサービス展開しよう!」って規模を広げすぎると、現状の成功度合いとのギャップが大きくて身動きがとれなくなっちゃうじゃないですか。慌ててスキップせずに階段を登っていく、ということが最も大事なんです。

宮本:外部からのそういった急かす声からガードする「柵」はすごく大切です。さきほどお話した「放牧」というイメージですけど、野放しに育てるのではなく、きちんと守っていくべきところは守っていかなければならない。

横山:「いまのITのトレンドだと、こういうやり方のほうが向いているんじゃない?」と提案するのもひとつの守り方ですね。たとえば、これは半年前につくったものなんですけど、400円のコンピューターなんです。

—:400円のコンピューター?

横山:そうなんです。これが単体でもWi-Fiに繋がって、センサーから発せられた情報を送ることができる。従来のコンピューターだったら、年々性能がよくなって「なんでもコレひとつでできる」ようになるのを目指していたんですが、近年ではあえて、できることを絞って、いかに小さく安くつくることができるかがトレンドになってきています。

福岡:いままでと常識が違うので、「コンピューターって使い捨てでいいんだ」と思った瞬間に、従来と同じものであっても、全く違う組み立てもできるでしょう。

横山:これはセンサーだけのコンピューター、これは音がなるだけのコンピューター、これは光るだけのコンピューター……と、それぞれで、できることが単純化されています。この機能を例えばiPad上などで凹凸の穴を組み合わせるようにして繋げることができる。センサーに光る機能を繋げれば、「玄関の前に立つと自動的にライトがつく」サービスをつくることができる。これはすでにたくさん商品がありますね。また、センサーの機能と音がなる機能を繋げれば、「赤ちゃんがベビーベッドから出ようとすると、フチにつけていたセンサーが揺れて、台所にいる母親に音で知らせる」などのサービス展開ができますね。

—:なるほど、基本形態を単純化させることで、いろんなサービスをつくりだすことができるんですね。照明が光るという点をとっても、便利なサービスだけではなく、エンターテインメントの分野にでも活用できますしね。

横山:そうなんです。いまおっしゃったアイデアのように、学生のほうが世の中のトレンドに詳しくて、「ライブの場でこんなんできるやん」と、僕たちでは考えもつかなかったような活用法を教えてくれたりもしますね。将来はコンピューターがもっと生活の身近に存在する、そんなチャンスはまだまだいっぱいあります。コンピューターっていうのは考えることが仕事なので、いままで思考能力がなかった電球とか椅子がなにか考えると、どんないいことがあるかねっていう、新しい考え方ができる。

—:それはコンピューターが安価になったからこそ、いろんなものに思考をつけることができるということでしょうか。

横山:はい。「■■さんって、こんな明かりが好みだったよな……」という個別性を持たせると世の中がもっと便利に面白くなりますね。でもそれって、誰かがつくらなければいけないんですよね。いままでにないものをつくり出す発想が必要です。

宮本:エンジニアリングの力で、今までになかったようなアイデアを具現化して、クリエイティブに発展させていくような目標値が、コース全体のコンセプトとしてはありますね。

—:聞くだけでワクワクしますね。

横山:そう言ってもらえるとありがたいですね。

 

▼日本雇用の形骸化から脱して、技術をもった人間だからこそ立てるトップを目指せ

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横山:クリエイティビティって膨大な失敗の積み重ねだと思うんですよね。最初から「これ当たるよね」っていって当たるようなものじゃない。試しに、「■■さんが来たら明かりがつくものでもつくってみるか〜」っていうミニマムなアウトプットがスタートですから。

—:ゴールの積み重ねなんですね。

宮本:サッカーでいうなら、99回蹴りそこねても1点入れたらそれで勝ちなんですよ。何度でも続ければ、そのうち成功するよっていう。多産多種と言ってもいいですね。日本人的な生真面目さって、失敗を許容する文化がないので、なかなか難しいんですけど。

横山:うまい失敗の仕方をみんな知らないんですよ。受け身が取れずに顔面から派手にころぶってことが往々にある。「先生、ぼく会社やる。起業するから会社辞めて、銀行から借金しました」みたいなことをいわれるともうハラハラで。それは土日にちょっとずつコツコツやって、100人お客さんつけてから辞めたらええやん……みたいな。

福岡:これは日本の伝統芸能とか伝統工芸のなかで、ずっと培われてきた世界なのかもしれないですよね。

—:と言いますと?

福岡:つくって見せる、これが趣味なのか仕事なのかがわからないような状態のなかで、仕様書とか、それこそ予算稟議もなく、自分の頭のなかのものを形にしていくような働き方が、太古から日本にはいろんな分野であったんだろうなって。

横山:それは ITの不幸ですね。日本人的な仕組みのなかで、「つくれないから誰かにつくってもらおう」と、欲しい人とつくる人が別れちゃった時点から不幸がはじまったような気もしますね。

横山:これは日本的雇用の慣習が大いに関係しています。アメリカってその瞬間に人を雇って、要らなくなったらクビが切れるので。日本はそれができないからバッファーになる会社が必要であると。すぐにクビが切れるアメリカは、クビになったからといって不幸じゃない。この仕事が終わったら、次に似たようなものをつくることができる場所に行けばいいという、スキル重視の雇用なんです。どうしても日本の場合、人に頼むものだっていう認識になっちゃったので、かゆいところに手が届かなかったり、お金を出してつくってもらってる以上、納品後のイマイチ感があっても直せなかったり。先述した繰り返しができないんですね。

宮本:あと根本的には、日本は文系が支配しているのが間違いですよ、明らかに。

横山:そうですね。

宮本:これは誤解を恐れずにいいますよ。明らかに間違いですよね。つくれない人間がなぜトップにいるのかと。

横山:ここ数年で、日本でもCIO(最高情報責任者)ではなくてCTO(最高技術責任者)にその価値が見いだされつつありますけどね。なぜCTOの価値が高まってきたかというと、テクノロジーの可能性で、ビジネスの組み立てがガラリと変わるんです。僕が、学生に常々いっていることなんですよ「常識を変えなさい」って。コンピューターは400円でつくれるよね、ってことを知っている人と知らない人で、出せるソリューションが全然違ってくるんです。この知識が経営の根幹にないといけない。つくる前に、失敗を恐れるがあまり100の議論、100の考察をするのが今までで。じつは製作コストってすごく安いんだよってわかった瞬間、ビジネスは変わってくる。かつ失敗を許容できるなら、とりあえず10個つくらせてみて、一番いいやつで試そうよ……という。これを判断できる経営者がいないんですよ。宮本先生のお話と一緒で、知らない人が戦略を立てるってどうなの、という……。

宮本:もちろん、技術者じゃないにしても知識が豊富なトップもいます。でも、テクノロジーで何ができるの? という問いを中心にすえて、そこに答えを出せるからこそできる経営判断とか、会社自身のビジネスの組み立てに関わっていってほしいな、という願いはやはりあります。文系支配っていう現状に対して、もったいないことになっているなあと思いますね。

—:そのあたりは、どういった人を育てたいかという部分と重なりますね。

横山:そこは宮本先生と一致しています。机の上でうんたら……よりも、とりあえず先にまず、つくって見せてほしい。

宮本:8割でも1割でも。すぐに止まっちゃうんですけど、っていう状態でも、これはエラーが入って止まっているのかな、なんやこれはって言って。ああ、そういうことね……と、話しながら次を模索できる。僕たちの仕事は、どこでつまずいているかっていう部分で技術的支援をすることでもありますから。

 

▼「技術」「デザイン」「企画」の3階層を学生には学んでほしい

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宮本:さっきといっていることは一緒なんですけど、新コースはぜんぜん知識先行型じゃないんですよね。いまの時代、「なんのために勉強するんですか」っていう質問がすごく多い。「そのうち役に立つから」という言葉は、僕ももういい飽きたんです(笑)。いま役に立たないことは、いずれ役に立つかもしれないけど、別にいましなくていい。だから、「これをつくりたいんです」っていうのだったら、必要最小限っていう言葉はよろしくないですけど、最短距離に向かうような学習の仕方っていうのはありっていうことなんですよ。

横山:革新的なコースなので、いわゆる今までの認可されるような教育課程に縛られない。たとえば、前期・後期っていう考えがありますよね。しかし、前期にこういうことやる、後期にこういうことをやる、月曜日の1時間目はこうやるということではなくて。ああ、それいいな、じゃあ、今日の授業はこれにしよう。という感じで、行き当たりばったりって言うとそれまでですが、臨機応変といいましょうか。当然、コンセプトは放牧なので。外側の柵からはみ出たりしないんですが、今日はこのあたりの草がおいしくないらしいと思ったら、別の所を食べてもらったらいいだけの話なんです。

宮本:たとえば、Aというプログラミング言語があるとして、世の中では一番使われている。いま僕が教えているやり方だと、「将来役に立つから、さあ、やりなさい」と丸投げするのではなく、「先生、僕こんなん見つけたから、これやりたい」と声があり、そこで、「あ、俺も知らんけど一緒にやろか」っていうことで、一緒になって学習と制作をします。まず、この言語体系を2週間でマスターして、プロトタイプを1週間でつくって、みんなでそれを使いながら意見を出し合ってブラッシュアップしようか……、という流動性の高い授業を行っています。時間割とか、今日の何時は何をするって縛りを設けてしまうと、うまく機動力が発揮できなくなるんですね。もちろん、書面上はそうなっていると思うんですが、実際の授業はもっと柔軟にやっていきたいですね。ある技術をとりあえず身につけるために1週間その勉強ばっかり……っていうのでもいいですし、それが終わったら先生から一切習うことなく、「黙っとってください! 1週間は僕がつくりますから!」っていうようなフェイズがあってもいいかなと思います。

—:基本的には自由にさせるけど、決して行き当たりばったりではないということですね。

横山:たぶんレール半分、自由にやっていいよっていう実習半分になるんじゃんじゃないかと。レールといっても、そこは訓練次第で学生自らがレールを敷くくらい自主性があってもいいと思うんですよね。かつ、大事な要素があって。それは「技術」と「デザイン」と「企画」っていう。

宮本:3本の支柱でやる。デザインって芸術性のそれではなくて、企画の設計ですね。企画の緻密さっていうか……。

横山:それぞれの要素が足りていない人って、他人にどのように見せていくとか、ブラッシュアップをどうしていくか、予測の組み合わせができないんですよね。「技術」の裏づけをもとに「デザイン」したものが、誰のどう役に立って、こんなお金儲けになるかもっていうのは「企画」なんです。知識や経験の前提が多ければ多いほど可能性は広まるので、「技術」の選択肢も広がります。取捨選択して「企画」から「デザイン」ができると理想的。そのため、これはカリキュラムとして行います。やっぱり、いままでその3つ、「技術」は技術の学校、「デザイン」はデザインの学校、「企画」は企画の学校……と、学ぶフィールドが別れていたのを、新コースでは全部やりたい、というのが特徴なんです。最低限、新コースに来た人はこの3つに対して、一言なにかいえるようにはなります。

宮本:3本柱はありますが、我々はやはり「技術」の学校であるところが一番大きな強みであると思っています。技術があって、武器や手数をそろえたうえで、あとは見せ方や使い方、売り方を考えられるところまでつながれば、日本の市場モデルをガラリと変えることもできると僕は思っています。

横山:僕は3本柱っていったら誤解だと思ってて……。それって「ピラミッド」だと思うんですよ。

福岡:階層?

横山:ええ。技術を前提としたデザインがあるというような形。

宮本:なるほど、そういう階層による重みっていうか、配分は違いますよね。

福岡:人材育成像の話に戻っちゃうんですけども、今年、神戸市のミッションで、市長と地元のIT企業の人たちがサンフランシスコに行ったんですよ。そこでうちの卒業生、神戸電子の4年制から大学に行った学生が現地に派遣されて来ていたらしいんです。その卒業生の他にも、他大学から3人ほどが派遣されていたんですが、IT企業の社長たちから見て、うちの卒業生がピカイチで光っていたと褒めていただきました。それはなぜかというと、サンフランシスコで現地の方からの起業のお話に対して、そのアイデアが自分だったらどうするかという観点で話を聞いていたと。会話の受け答えも、その思考をベースに行っていたそうです。まあ、その卒業生は、入学した時から優秀だったらしいんですが、さっきの話でいうと、いま適応できる技術を持っているかどうか、すぐに目の前でプロトタイプがつくれるかどうか……っていうことが会場では問われていたんです。

福岡:サービスを生み出すとき、ユーザーのニーズを持っている人が一番強いじゃないですか。それが、いま企業ではなくて個人なんだっていう話ですね。ニーズを把握している人が技術を持てば、個人でもサービスが起こせる。もしくは企業のなかでも顧客のすぐそばにいて、顧客のニーズを逐一吸い上げることができる。つまり、直接かゆいところに手が届くものをつくれるという人が当然一番偉いですよね。それができる人を、宮本先生は文系、理系と表現しているけど、文系、理系の差もなく、日本ぐらいでしょ、これが軽視されているのは。

宮本:そうですね。定義をすること自体がナンセンス。

福岡:要は問題解決行動において、これはちょっと苦手だから、嫌だから……っていう人はダメなんです。あらゆる問題解決行動のツールとして、使えるものは全部吸収してやるっていう人が評価されていくと思うんですよね。そのなかでも神戸電子は解決の手段としてITを大きくクローズアップしている。でも、これはうちだけの話ではなくて、当然もう国際的な動きだと思うんですよね。

横山:ひとつそこにポイントがあると思っていて、理系、文系の縛りはナンセンスなんですけど、技術系、非技術系に表現されるようなところがあって。つまりは技術の可能性が世の中を変えるっていうことなんですよ。うちは技術の学校だから、そこは強みですね。よくある社会ニーズを調査してうんたら……じゃない。僕、校長のところにひとつ突っ込みを入れたいのは、現代ってニーズが見えない時代だと思うんですよ。ニーズ自体、こっちから見せなければ見えない。

—:具現化していかないと?

横山:そうなんです。

福岡:そうですね。そこはカスタマイズしてやらないといけない。

横山:「例えばこんなサービスはどう?」って見せて。

福岡:その通り。

横山:配車サービスの「Uber」で例えると、「タクシーが自動で呼べるんですよ」、「え、いいじゃん」というやりとりをもってはじめてニーズが生まれ、サービスがつくられる。それがいまの時代。

福岡:要は「needs aud wants」、「wants」っていうのは、あるセグメントされた領域に関して、精通した人がずっと練りためたものもあれば、複数人で雑談しているなかでセレンディピティ的にぽこっと生み出されるようなものもある。でも、そっちのほうが結果的には大きなモデルになる可能性は、いま出てきてるわけじゃないですか。そういう意味で、いま「needs」も「wants」もたぶん同じだと思うんですよね。顕在化していないけれども、具体例を提示することで、「あったらいいなぁ」が「これがほしい」という意識に変わる。

 

▼「needs aud wants」を刺激して、潜在的な欲求を顕在化させるつくり手であれ

横山:僕はひとつ、次元を超越したいと思っていて。「needs」も「wants」も、分析っていう言葉でひとり歩きしていると思うんですよ。僕は、それと少し違う仕掛け方で、自分が欲しいものを試しにつくるという方法を考えています。それは100個あってもたぶんいらないって周囲からいわれるんですけど、それをつくって周囲にみせることで、「needs」や「wants」の意識を刺激できるっていうことに可能性を見出したいんですね。分析だけはされているんですけど、それはどうやるのっていう問いに関しては、いろんな手法はあれども、みんな結局核心を突かない。それぐらいなら自分が欲しいものをつくる。ただしクイックに。ひとりの欲しいものが、ひょっとしたら周りも欲しいかもしれないっていう、ブラックボックスの蓋を自分でつくってあけるというワクワクに、技術系だからこそできる可能性を見出したいっていうことですね。だから学びの順番は「技術」、「デザイン」、「企画」っていう順番で突き抜けていく。

福岡:3階建てだ。

横山:そうです。かつ、その途中で無駄な事象が起きる。でもそれは無駄でいいんです。そこはポイントとして評価したい。少しずつ日本の社会もそう変化しつつあると思いますね。「Uber」でもなんでも、実際にそのサービスが出てくるとみんな、「俺、昔から考えてたし」っていうんですよ。でも実際にやった人は全然いない。じゃあ、なんで君はやらなかったのっていう……。そこなんですよね、「needs aud wants」を、神戸電子だからこそできる仕掛け方で、世の中を刺激していきたい。そういう意味で僕は、学生にはわがままでいてほしいですね。世の中で不満があったら技術で解決してみる。「周囲の人も困っているかもしれないから」っていう、そういうだけの人は多いけど、結果として具体策をつくれるのはうちのコースの学生だけでしたっていう結果を残してあげたいですね。

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さて、次回はいよいよ最終回の後編です。自分でなにかつくって、世の中を変えていきたいと意気込むあなた、最終回もお見逃しなく。

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いよいよ今春スタート!新コース「Webエンジニアコース」の可能性をさぐるロングインタビュー 前編

2015.12.19

CATEGORIES:国内 ,学校・教育

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2016年春、神戸電子専門学校に新たな学科「Webエンジニアコース」がスタートします。アイデアをだせて、つくれて、運用できる、在学中の起業も決して夢ではない、次世代のクリエイター「クリエイティブ・エンジニア」を育てるためのコースです。

今回は、Webエンジニアコースに着任する二人の先生と共に、このコースについてインタビューをうけた模様をお届けします。長い記事につき 3編に分かれますが、最期まで読んでいただければ「Webエンジニアコース」への期待感で満たされること間違いないと思いますよ。僕自身入学したくてうずうずしているので。

 

▼Webエンジニアコース着任の先生がた

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—:今日はよろしくお願いします。まずはふたりのプロフィールからおねがいします。

 

宮本先生(以下、宮本):僕は新コースのリーダーとして、カリキュラムの構築や内容の精査に携わっています。

 

横山先生(以下、横山):僕はインターネットの技術屋です。もともとはネットワーク分野で博士号を取っているんですが、インターネットやネットワークが関係するようなものだったら何でも来いと、今まで講義や研究開発をやってきました。宮本先生はもともと、人工知能が専門なんですね。

 

—:そうなんですね!では先生方が元来専門とされている分野について教えていただけますか?

 

宮本:そうですね、僕は人工知能が専門でずっとやってきたんですけど。今「第三次AIブーム」と呼ばれている時代がきていまして。

 

—:第三次ということは、第一次と第二次はどういったものだったのでしょうか?

 

宮本:第一次が、回路を組んで、人の知能に近い働きをさせようとした時代。ただ、当時の生産技術では思考回路を1回1回つくり直さなければ新しい計算ができず、アイデアを形に実現するまでにものすごく時間がかかったので、一旦みんな諦めたんです。第二次が、その演算をソフトウェア上で実現した時代です。

 

宮本:現在の第三次AIブームが、コンピューターが自分で「経験」を獲得する機械学習ができるようになったということです。たとえば将棋のロボットでいうと、一手ずつ次の手を計算するのではなく、過去の棋譜から似たような譜面を検索し、今の状況にベストな回答を導き出せるようになった。それは、第一次ブームで頭打ちになった推論能力が、半導体の進歩で飛躍的に高まったこと、第二次ブームで限界だった知識の面で、インターネット上の膨大な情報を即座に検索して使用できるようになったからなんです。

 

横山:インターネットの話がでたので、追加で僕の自己紹介を。僕はインターネットの空気、とくに変化の激しかった頃を経験していたんですが、これは自分にとっての宝と思っていまして。そもそも当初は学問じゃないと、「つくって遊んでる連中だ」と揶揄されていた最後の時代に参加できたんですよ。そうすると何をやっているかというと、まあ何でもやれって言われて育ってきたんですね。

 

横山:分野がまだまだ混沌としていた時代なので、ネットワークもやるし、ネットワークを誰のために、どうして、どのようにつくっているのかも考える。ネットワークを使ったアプリケーションも考える。時にはコンピューターも自作していました。その当時はネットワーク利用の黎明期。現代からすると非常にミニマムだったかもしれませんが、全部のジャンルを経験できたっていうのはやっぱり宝ですね。今の時代、見せかけだけわかりやすく産業化して役割分担で仕事をしようとしちゃっているので、よいものが生まれなくなっているんです。僕が自負しているのは、ネットワークという切り口をつくった瞬間にいろんな分野と関われるんですね。ミュージシャンから教育の人まで、あらゆる分野で「ネットワークであなた達の業界を良くしますよ」っていう意味では関われるんです。

 

福岡(僕のことです):たとえばAmazonでは、商品ページの下部に「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と関連商品への誘導がでますよね。これはコンピューター、つまりAmazonの人工知能が、購入履歴の膨大なデータをインターネットから検索し、ユーザーが興味を持ちそうな関連商品を回答しているんです。現在のクリエイティブは、この人工知能とインターネットの力がとても重要になってきます。そこに新しいアイデアを実装させて、新しい価値観をつくりだしていくのがWebエンジニアコースの目標になってきます。

 

—:なるほど。ゆえに人工知能とインターネット、それぞれの知識・経験が豊富な先生がたが新コースに携わっていらっしゃるんですね。

 

 

▼アイデアをどんどんカタチにしていくWebエンジニアコース

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—:「Webエンジニアコース」って、具体的にどういったものをカリキュラムにされているんでしょうか?

 

宮本:具体的にどんな講義があって……というのはまだ確定ではないんですけど、いや、確定も何もないのかもしれないですね。

 

—:というと?

 

横山:新コースは、午後からは授業はなく、すべてが実習時間になります。学生たちが新しいアイデア、「これって面白いんじゃないの?」と湧いてきたものをどんどん形にしていく。それはシステムなのかもしれないし、プロダクトなのかもしれない。形がある訳ではなく、サービスそのものなのかもしれない。どんどん新しいものをつくってそれを運用していくようなイメージになります。

 

福岡:なので学生のうちから企業できたり、自分たちがつくった商品やサービスを企業に売り込むこともできるんです。

 

—:それは起業だけじゃなく、就職するにしてもポートフォリオとして、かなりパワーがありますよね。校内課題のアーカイブだけじゃなく、実際に市場で使われている訳ですから。

 

宮本:そうです。勉強して資格を取って……っていうのが、いわゆる従来の教育現場だったんですよね。クラスに関しても、担任がいて、4〜50人相手に授業をしていた。新コースは人数をギュッと絞った少数制になります。そして学生たちの活動時間をしっかりと担保。あくまでもアクティビティの主体は学生側で、それを我々が全力でサポートするというかたちなんです。とはいえ、初日から「さあ、やりなさい」って言って、何かができるっていうわけではないので、ある程度の枠組み、大枠……牧場でいう柵みたいな部分ですね。ここから先は学校じゃないよっていう境界線は見ていくけれども、その中で自由に放牧していると。小屋のなかにずっと入っているではない。動物的な表現はちょっと正しく伝わるかどうかが微妙なんですけど、イメージとしては放牧に近いですね。

 

横山:そもそも、従来の学校の勉強って、将来、フィールドに出たあと活躍できる「らしい」人をつくるはずだったんです。そのための準備として勉強を教えている、と。

 

—:「らしい」?

 

横山:できるらしい、できるのではないか、と思われる人をつくるという……。

 

宮本:要は社会人としての入り口に立つための、その準備というか、資質さえそろえればよかったんです。でも、しょせん学校で経験したことなんて、ほとんど会社に入ったらリセットされますよね。社会の間口をくぐるところが、教育で最大のポイントっていうやり方はしていたと思うんです。それを否定するつもりはないですけど、それもひとつの基軸として残しつつ、間口を突破するってことも考えないといけなくなってきた。時代の流れとして。学生時代から、たとえば企業とコラボレーションしたり、単なる就業体験に過ぎないインターンシップじゃなく、実際にプロダクトを出したりすると、これは本当に実践経験を詰めるということなので。

 

福岡:そうですね。会社で活躍してくれる人を社会が欲しいのだから、その活躍そのものが学内での活動で示していければ理想的です。なおかつ、ほかの分野に比べると、WebエンジニアコースはITの分野なので、活躍イコール、エンジニアとしてものをつくるということなので、より社会に示しやすいかと。

 

▼シリコンバレー発の新しい起業法「リーンスタートアップ」を実践

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横山:すこしIT業界の世界に触れるんですけど、IT分野に関する何もかもがすごく安くなっているんですよ。これは絶対に値上げすることがない。どんどんコストが安くなっているってことは、個人ができることがどんどん広がっているんです。たとえば個人レベルで開発したものって、技術を用いて、それで一体何ができるのか? っていうことを模索するわけなんですけど、模索しきってからじゃないと技術として証明できない、っていうのとはちょっと違うんです。

 

福岡:いま横山先生がおっしゃったこと。これはアメリカなどのIT分野が産業と密接に結びついて、かつ、社会的成功とも結びついている分野です。次世代の新しい成功の仕方っていうのがひとつありまして、これは学生にどんどん伝えていきたいことなんですけど。それは「成功するまで続けたらいいんだよ」っていうことですね。

 

宮本:要は、いかに失敗を繰り返しながらベストに近づけていくかってことなんです。近づくためのいろんな方法はあるんですけど、エンジニアであることが一番短距離でベストに近づける存在なんですよ。自分でものをつくれないと試行錯誤できないですし、最初から他人につくってもらうと、一回失敗したら次のブラッシュアップにお金がかかってくるので懐具合によっては二度とブラッシュアップできない。

 

横山:かっこいい言葉でいうと、自身のつくったもので、市場とのダイアログを繰り返していき、成功が導かれる。ユーザーと「こうしたらもっと良くなる」とか、対話を続けていくことが重要なんです。かつ、さっき言ったように、技術を生むコストが安くなっているので、スタートは簡単に切れる。だからまずは、何かつくって友だち10人に見せろよ、って学生に教えるんですね。10人に見せてダメなもの、もっというと、自分が見てダメなものは人に見せるなよと。

 

宮本:中途半端で自信がない人に限って人にヒアリングするんですよ。「自分はわからないけど、みんなが良いと思ってるから」って言い訳するんですけど、自分に嘘をつくものづくりは絶対ダメ。自分が満足すると、自信を持って友だち10人に見せられますから。

 

横山:そうなんです。自分と違う視点でいろいろ言ってもらえるし。10人に見せると、今度は予想外のツッコミとかが降ってくる。「これあったらこんなんするわ」と。

 

—:それがブラッシュアップされていくということですね。

 

横山:そうです。そうすると次の100人が見えてくるんですよ。友だちの友だち、そしてその先の友だち……っていう知らない人にまで見せてもちょっと安心できる。たとえば学校のなかでみんなに見せびらかすっていうのが10から100人の規模だとして、そういった箱庭のなかで見せびらかしていくと、さらに次の1000人が見えてくるんです。1000人っていうと、インターネットで知らない人に配るぐらいの規模ですよね。1000人が「良い!」っていうものになってくると、もう放っておいても大丈夫。

 

福岡:これがひとつの成功体験なんです。

 

横山:現状の教育現場や企業って、そういうやり方を学ばない。形骸的なやり方やチャレンジって、いきなり銀行に借金して1万人向けに何かつくっちゃう。途中で焦げついたらにっちもさっちもいかなくなるやり方なんですよね。

 

—:途中でしまったと思うけど、借金もあるし、ここまでつくったし、もう今更戻れない……みたいな。

 

宮本:そうそう。1、10、100人……っていうレベル感の達成度合いでいえば、じつは個人が土日にやったってできるんですから。ただ日本の場合はどうしても、個人でがんばるとか、会社のなかでがんばるっていう考え方なんですけど。それを社会全体で教えているのがアメリカですね。なかでも、いかに多くチャレンジできるかっていう点で、ITは挑戦が容易です。

 

宮本:たとえば10人に向けて「これは技術的にそういうつくり方することもできるんですよ、現状のものは10人向けだから、いまこんな感じで手を抜くんだけど、100人向けのときにはこう変化させて……」と、どんどん小さな成功と改善点を積み重ねながら成長していく。アメリカでは「リーンスタートアップ」って言うんです。Webエンジニアコースでは、「リーンスタートアップ」をITで在学中から実践していきます。

 

福岡:「リーン」とは「薄い」って意味の言葉ですね。薄くスタートして太らせていく、アメリカのシリコンバレーを発端とする新しい起業方法です。最初は低コストで最低限の製品やサービスをつくって、ユーザーの反応に応じてブラッシュアップする。このサイクルを繰り返すことで、起業の成功率が飛躍的に高まるといわれています。

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—:とりあえずは始めてみることからスタートする、と。

 

宮本:そうです。だから、学生たちには8割でもいい、何なら1割でもいいからつくったものを見せてほしい。周りに見せて、反応値をうかがって、つくり込んでいくなかでベストを目指してほしいんです。

 

—:それは画期的ですね。どうしても制作物って、完成しなきゃ見せてはいけない、他人に見せるレベルまでいってないのに発表なんてできない……と学生たちは尻込みしますし、評価する側も「できてないじゃん!」って減点するのが普通ですから。

 

横山:新コースでは、できていないのが当たり前なんです。そこからいろんなコメントや試作、改善を経ていくものなんですから。だから僕たちは「できてないじゃん!」っていうのは絶対に言わない。現状のものから、どうやったらもっと便利にできるのか、あるいは新しい可能性を一緒に考えていく。そんな授業を目標としています。

 

—:これは、すごくワクワクする授業ですね!

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いかがでしょう、いままでの授業の概念を打ち壊す「Webエンジニアコース」。神戸電子にとっても、僕自身にとっても新しい挑戦です。でもこの挑戦、とっても未来へのワクワクが芽生えてきませんか?

 

次回もロングインタビュー、後編をお届けします。

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3Dプリンタで未来の作り手を育てる! インダストリアルデザイン学科の実直なものづくり 後編

2015.12.1

CATEGORIES:国内 ,学校・教育 ,神戸

3Dプリンタ-(3)

前回、インダストリアルデザイン学科の川口先生が業界のプロに向けて講師を担当された「公益社団法人 大阪府工業協会」主催’3Dプリンタセミナー’の様子と、神戸電子で使用している3Dプリンタの紹介をしました。後半となる今回は、インダストリアルデザイン学科について、詳しく川口先生に語ってもらった様子をお届けします。

インダストリアルデザイン学科の全体カリキュラムは、3D-CADの設計とプロダクトデザインが二本柱となっています。CADを用いてデザイン図を引き、3Dプリンタでの出力、レーザーでの削り出しや加工などを経て、具体的な作品を製作しています。製作には3Dプリンタだけではなく、レーザーカッターや、その他のデジタルファブリケーションツールなどを駆使しながら、デザインや機械設計の手法を学んでいきます。

ルアー-(4)

3Dプリンタを用いた制作物を紹介するに、丁度良い物が出来上がっていました。これらは釣り用のルアーです。3D-CADで設計データを作成し、データを3Dプリンタで読み込んで造形。ここでルアーが裸の状態でできあがります。さらにそれをUVプリンタでグラフィックを施し、ルアーに絵つけ、金具を取りつけてコーティングを施した後に完成します。

この授業の面白いところは、ただ単純にルアーをつくるだけではなく、3Dプリンタ各学生が製作したルアーを用いて、神戸の海や池で実際に釣りのフィールドテストを行うという点です。

ルアー-(6)

実際に釣りをすることで、ルアーの形はこれで良かったのか、装飾はギラギラしすぎていないか、逆にもっと色を使うべきであったかなどなど。自分たちの作品が、市場のなかでどのように価値づけられるのかを、使用の実体験を通じて学びます。もちろん。釣りの腕前はあるかと思いますが(笑)。

ものづくり団-(1)

そうした、実体験をともなう製作の日々が学科の授業。その取り組みに関してはFacebookの「ものづくり団」というグループのページで見ることができます。学生と教員達で結成し、学科活動のなかで製作した作品を紹介したり、授業の様子もレポートしています。

ラジコン-(4)

いくつかある記事の中で僕が紹介したいのは、3Dプリンタでのラジコンカーの製作。こちらもルアーと同じく3D-CADでデザインを設計し、3Dプリンタでパーツを出力しました。ルアーは出力物そのものが商品となりますが、ラジコンカーの場合、出力するのはあくまでパーツ。パーツを組み立てて一台の車にする必要があるため、微細なズレが発生しないよう、より高度な製作技術が必要とされます。

ラジコン-(1)

現在は5台が完成していて、今後はラジコンカーの機械制御をハード分野の学生に関わってもらうなど、多学科とのコラボレーションを考えているそう。学科を越境し、それぞれの得意分野を活かしながら、ひとつのものをつくる……。神戸電子ならではのアウトプットがまたひとつ生まれそうです。

ラジコンカーの製作も、試走を重ねて改善を重ねていきます。こうした取り組みは、「市場と変わらないものづくりができる」学生を育てられると川口先生。デザインしてつくって終わり……ではなく、ひとつの商品にかかる加工時間がいくらで、材料費がどれくらいで、いくらで売れば商品の利益がでるのか。そこまでを考えることで、市場と同じ感覚を身につけることができるのです。

ものづくり団-(8)

実際に今年の11月には、かねてから商品開発を続けていた、段ボールを用いた薫製機を使って、北野坂のお祭りで薫製の実演と販売を行いました。自分たちが改良を重ねながらデザインをしたものが、貨幣価値を生み、薫製の販売を通じて「おいしい!」「楽しい!」というユーザーの声をゼロ距離で実感できる。学科の卒業生は、3D-CADの技術者として働く人が多いのですが、学生のうちから成功・失敗の具体的な体験を重ねることで、より早くプロの技術者となりえるのだと感じています。

ものづくり団-(9)

「いい機械を使える、高い材料を豊富に使用することができる、これは作り手としては二の次。企画を立てて、デザインを設計して、現物をつくってみて、実際に使ってみて、問題を見つけて、また企てて……と、このサイクルをこなせることが、よい作り手になるためのすべての基本。実際の開発についても学生の学びについても、この根幹は同じことだと思います」と川口先生はお話ししていました。

ルアー、ラジコンカー、木製雑貨、インテリアプロダクトなど、興味の湧くテーマのデザインを学びながら、上記のサイクルを繰り返し経験することで、使い手にとっての付加価値を見いだしたり、つくり手に必要なコスト意識や環境意識などが身につく。そして、専門技術を使い手とつくり手、さまざまな立場の人の視点に立ってものづくりの現場で専門技術を活かすことができる……。神戸電子のインダストリアルデザイン学科ではそんな人材育成を目指して、授業を行っています。

ラジコン-(3)

最先端の技術も、根底にあるのは市場のニーズをしっかりと理解して、そこに合ったものをつくれてこそ。実直にものづくりを続けるインダストリアルデザイン学科のみなさんが、次にどんなものを生み出してくれるのか、とても楽しみでなりません。

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