「神戸市公安9課」前半 市とアニメの公民連携PRプロジェクト

2015.6.26

CATEGORIES:国内 ,神戸

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©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会

「神戸市公安9課」が始動しました。

「公安9課」とは、世界的な人気アニメ「攻殻機動隊」の主人公たちが所属する架空の情報機関のことです。その「攻殻機動隊」シリーズと神戸市が、公民連携による面白い広報プロジェクトをはじめました。

「攻殻機動隊」の原作者である士郎正宗氏は兵庫県出身で、作品自体も近未来の神戸を想起させた架空都市「ニューポートシティ」が舞台となっています。本ページのトップ画像は、このプロジェクトを象徴するものとして描き下ろされたもので、神戸のランドマークであるポートタワーと作品の主人公が描かれています。

プロジェクトの目的は、「聖地巡礼」による観光振興もありますが、「IT産業の振興」や「オープンデータ・ビッグデータの利活用」を推進するIT先進都市神戸のプロモーションにも力点が置かれています。この点、理事を務める「地域ICT推進協議会」を通じ関わっています。20日には「攻殻機動隊 新劇場版」も公開されましたので、注目度さらに高まると思われます。詳しくは専用サイトで。

神戸市公安9課

さて今回、「神戸市公安9課」プロジェクトメンバーの方々(市職員)にお話をうかがう機会がありました。公民連携を担当されている河端室長と、政策調査を担当されている瀬合課長、そして市のIT推進を担当されている松崎課長、多名部課長です。

神戸市と攻殻機動隊の広報連携、今後の展望、加えて、攻殻機動隊のなかに予見されている、IT技術が市民にもたらす新しい生活環境、今後神戸が推進していくIT関連施策にも話が及びました。前後編にわけてその模様をお伝えします。

――:「神戸市公安9課」の広報について、本プロジェクトは公民連携形式ということですが、具体的にはどのような団体がどのように関わっているのか教えてください。

河端室長(以下、河端):今回の計画は、「公民連携PRプロジェクト」として、アニメ製作委員会と行政の関係者が一緒になって進めています。市役所のメンバーは、企画調整局情報化推進部やデザイン都市推進部、市長室広報課、産業振興局経済企画課や観光コンベンション課などです。民間の事業者のメンバーは、「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会の方々、それから、福岡校長も在籍されている「地域 ICT推進協議会」、それから「神戸フィルムオフィス」、「神戸国際観光コンベンション協会」のみなさまになります。

――:多方面の方々が関わったプロジェクト体制ですね。

河端:そうですね。民間では、IT事業者以外に、製作委員会の内部メンバーとして、映画の「東宝」、アニメプロダクションの「プロダクションIG」、大手広告代理店の「電通」、アニメ・特撮の「バンダイビジュアル」といった企業の方々もおられます。ありがたいことに、いろいろな方が関わって盛り上げていただいているところです。

――:市と企業群を合わせると、かなりの人数ですね。まさに一大プロジェクト。観光施策としては、攻殻機動隊とのコラボで現在どんな計画が動いていますか?

河端:攻殻機動隊は、作品中に神戸を想起させるようなシーンが多々登場することもあり、「このシーンは神戸のここなんじゃないか」と、実際の場所と比較できるような形で、サイトのなかで紹介していこうと思っています。実際の神戸の街で、色々な登場場面となっている場所を訪れていただけるよう、聖地巡礼効果を狙っていきたいと思っています。是非特設サイトにご注目いただければと思います。

――:今回の連携企画にあたり、神戸市民をはじめとする受け手の反応はいかがでしょう。

瀬合課長(以下、瀬合):Twitterを分析しますと「神戸市がようやく本気を出しはじめた」「これを待っていた!」など、関心の高さがうかがえる反応をいただいています。サイトに関しても、攻殻機動隊の世界観と合っていて、今後の展開に期待するという声が95%以上。批判的な声はほぼ見当たらないですね。

――:素晴らしいです!攻殻機動隊以外にも神戸の街はアニメやマンガの舞台として描かれることが多いように思います。観光施策として、今後もアニメやマンガに対しどのような期待をされておられるかお教えください。

河端:神戸には「神戸フィルムオフィス」という、映画のロケ支援を行っている組織があります。映画の撮影にも市内のいろんな場所が多く使われますが、アニメとの本格的なコラボレーションは今回がはじめてではないかと思います。今回はチャレンジの意味合いが強かったですね。

瀬合:このプロジェクトは、神戸市役所にとっては大きな挑戦なんですね。これまで、神戸市はサブカルチャーに対しては硬いところがあり、アニメやマンガを必ずしも大きくクローズアップしてきませんでした。ただ、久元市長が就任され、結構、組織全体としてチャレンジングな動きが出始めているなと思います。攻殻機動隊以外にも、色々な作品が神戸を舞台にしていますし、これからもしていくと思いますが、まず神戸市公安9課をしっかりとカタチにして行き、アニメやマンガカルチャーが街にもたらす効果をじっくりと見定めていくことが重要なんじゃないかなと思います。

――:なるほど。マンガやアニメそして、実写映画の舞台としても結構なシェアが有りますし、今後聖地巡礼としても多面的に盛り上がっていくと嬉しいですね。話は戻り、攻殻機動隊との連携で、今後の発展があれば教えていただけますか?

河端: 20日から新劇場版公開になりますので、まずはそこに合わせてPRを強化していきます。同作品に注目されている方に、神戸市やその施策にも注目していただけるよう持っていきたいと思います。製作委員会とのコラボは秋ぐらいまで続く予定です。11月には、世界最大級のデジタルコンテンツのカンファレンス「SIGGRAPH ASIA 2015」がここ神戸で開催されます。そこでも「攻殻機動隊 新劇場版」と連携し神戸の施策をPRしていきたいと考えています。それと、これはちょっとしたことですが、神戸新聞にも書き下ろしイラストを折り込み広告として載せていただきましたし、前作となる「攻殻機動隊ARISE」では、首都の設定が福岡市だったということもあり、「神戸と福岡の未来」と題し、双方の市長のメッセージを載せた企画記事も展開しました。

――:「都市の未来」、多分にIT領域との関係性を想起させるタイトルが出ましたので、次はそちらの方に話題を振りたく思います。神戸市公安9課は、アニメと街の観光連携にとどまらず、街のIT振興にも大きく関わっていますよね。

松崎課長(以下、松崎):そうですね。神戸市公安9課関連の話であれば、去年の冬から「オープンデータの利活用」に関するプロジェクトが動きはじめました。市が持つ膨大な情報を活用し、市民生活のクオリティを上げることができないか? という想いをカタチにするべきだと考えています。世界の先進的な都市で取り組みが始まっているオープンデータについて、神戸市も取り組み始めました。今までは情報というものを物理的な形で繋いでいくのみでしたが、もっとネットワークを通じて人々の知恵や知識、こちらが知り得ない情報を繋ぎながら、いかに新たなものを生み出していくか。こういったことに取り組むのが、私の担当しているICT施策です。

――:攻殻機動隊が仮想世界として世界に先駆けて提示したネット上「神戸市公安9課」人気もさることながら、そこに掛け合わせた現実世界でのICT活用にも注目すべきですね。攻殻ファンならば常識ですが、作中には「電脳」と呼ばれるネットワーク世界が物語の中心に有ります。現在のインターネットでは、PCやスマートフォンなど、なにかしらの電子デバイスが必要になりますが、「電脳」は脳自体にマイクロチップを挿入することで、特別な装置がなくとも直接脳からネットワークに接続することができるというもの。現時点では、さすがにこの電脳世界とまではいきませんが、スマートフォンやウェアラブルデバイスが普及し、私たちの生活は、現実世界と仮想世界(ネット)を、いつでも、どこでも、行き来できるようになってきました。かつてはインターネットを利用するのにも、甲高いダイヤルアップ接続音を聞きながら、ポータルサイトにアクセスしなければなりませんでしたよね。ポータルとは、港(port)から派生した言葉。つまり、文字通り門や入口を“通過”しなければ、ネットの「向こう側」にはいけなかった。今では高速化したネットワークと多様化したデバイスを使いこなし、人は幅広い情報を瞬時に得ることができる。ゆえに情報は秘匿するのではなく、公表して活用することでその価値が上がってくると。

松崎:オープンデータの利活用は神戸市として重要な取り組みであることには間違いないのですが、それだけではなく、リアルの世界との繋がりをつくっていかなければバーチャルな世界は成り立ちません。バーチャルな世界を利用してリアルな世界の質を上げていく。そのコネクションはなにかというと、ビジュアル展開を通じて理解していただくアプローチをとることです。

――:行政のICT活用として、パッシブ型だったのが、未来予測も含めてアクティブのほうに歩を進めるということですよね。市民から見てわかりやすい具体事例或いはプランは有りますか?

松崎:はい。たとえば被災地の写真や映像をオープンにして、防災・共済に使ってもらうとか、映画のロケ地をマップにして、アプリとして落とせるようなアイデアをいただいています。私たちがまもなくリリースしようとしているのは、地図情報をベースにした、市民公開型のオープンデータサイト。それでなにができるかというと、公共施設の場所がどこにあるかがマッピングでわかる。それを利用して、避難所がどこにあって、地域での避難経路を考えるといった活用ができます。防災だけではなく、その地図情報を使って観光にも展開できる。それらが官だけではなく、市民レベルでプロットすることができ、行政のデータを使って個人のルートマップを地図上でつくることも可能です。

――:行政しか持ち得なかった情報を公開する。市民が自分ごととして情報を活用できるようになりそうですね。市役所の推進体制はどのようになっていますか?

多名部課長: 3つ部局が横断的に関わっていると思っていただいていいと思います。ひとつは市や市役所のIT化を推進する部署です。次に市域の観光を活性化する部署。それから、これからの神戸の街をつくってくれる若手の起業家、スタートアップの人々を育てることを目的とした経済企画部門。これら3つの部署が主に関わっています。それらを統合する公民大学連携推進室。そして広報課がPRという観点で全体を俯瞰しながら見ています。そういう形を理解していただければ結構です。

――:実によい体制ですね。ビジュアル面でのプロモーションから、広義の意味での街づくりに至るまで、攻殻機動隊を題材として、幅広い取り組みがなされている。画期的な体制で推進される本プロジェクトですが、最終的なゴールはなんでしょう?

河端:目的はふたつあります。ひとつは観光振興。もうひとつはIT関連産業の振興や、オープンデータの利活用によって、 街のITを推進させること。この2軸を神戸市公安9課として推進し、PRしていきたいと思っています。

松崎:神戸市は観光にとても力を入れていますが、近未来の神戸を描いている作品を通じ、神戸を訪れた人に、そのイメージを合わせもって体感できるような仕掛けをつくっていきたいですね。あと、神戸市はこれから特にITに力を入れていくぞ! という強いメッセージを打ち出したい。将来、ITはものづくりとしっかり繋がっていくと思っていまして。「IOT」(Internet of Things)と呼ばれる広義な意味でのものづくりが、デザイン、クリエイティブな思考そのものと深く繋がっていけばいいなと。神戸市はもともと、「デザイン都市」を掲げていますから、今まで神戸市が進めてきた政策の延長にITの要素が加わっていくと、とても魅力的なクリエイティブシティが生まれゆくのではないかと思っています。

――:ITを活用した、クリエイティブな街のデザイン、そして実現。かなり期待できるのではないでしょうか。一市民としても、微力ながらデザイン都市に関わらせていただいている身としても、楽しみです。

次回は、神戸市のIT施策について、より掘り下げた対談の様子を紹介します。
 
 

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「Digital Works」最優秀賞学生チーム 商業化も見すえた高機能ランチャー

2015.4.30

CATEGORIES:国内 ,学校・教育


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年度末に「Digital Works」という各学科の成果発表会を行っています。毎年、IT分野(ITエキスパート学科、ITスペシャリスト学科、情報処理学科)では、「もうこのプロダクトを引っさげて、起業してもいいんじゃないか」と思わせてくれるようなプレゼンが揃います。今年も、事前選考の難関を勝ち抜いた7チームが登場。300人を超える来場者の前でプレゼンテーションを行いました。

そのなかで「2年生部門」で1位を獲得し、最優秀賞を受賞したのが、高性能なランチャーを開発したチームです。ランチャーとは、ファイルやプログラムをアイコンで一覧表示し、デスクトップを有効活用できるソフトウェアで、MacでいうところのDock機能やLaunchpad。これに、検索機能やユーザー向けのカスタマイズ機能を付け加え、Windows向けのアプリケーションとして開発したのが今回の作品です。

発表会場でもゲスト審査員や来賓企業の方からたくさんの質問やコメントが寄せられ、その注目度の高さが伺えました。すでにWebから無償ダウンロードできるのですが、今後さらにアップデートしていけば、ビジネス化の可能性をもったソフトウェアになるのではないかと期待しています。今回は、そんなとびきりのサービスを生み出した制作チーム「priMus」のみなさんと少し話をしてみました。

———:難関を勝ち抜いて、みごとに最優秀賞を受賞し、来賓企業を含めて非常に注目を集めましたね。おめでとうございます。本日は、その開発秘話や今後の展望を尋ねたいのですが、まずはじめに、みなさんのプロフィールを教えていただけますか?

増澤:僕たちのチームは、全員2年生なのですが、学科はまちまちです。僕は4年制のITエキスパート学科の増澤優俊です。兵庫県立姫路別所高等学校の出身です。

池内:3年制のITスペシャリスト学科、木内昭英です。出身高校は兵庫県立加古川北高等学校です。

甲斐:ITスペシャリスト学科の甲斐智之です。出身は兵庫県立東播工業高等学校です。

芥川:ITエキスパート学科の芥川修平です。姫路市立琴丘高等学校の出身です。

———:ありがとうございます。まず、みなさんがITを学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

増澤:高校生の頃に自分がやってみたいなと思ったもののなかで、ITがもっともハードルを高く感じたんです。だからこそ、しっかり学べたら強い武器になるだろうなと。

池内:僕は、小学生の時にパソコンが好きな先生がいたんですが、その先生が「これからはITの世界だ!』と仰っていて、なんとなく頭にあったんですよ。それで、携帯電話が普及しはじめた頃に、改めてITエンジニアという職業を知ったんです。時代の最先端を先取りしておいたら役に立つだろうという思いと、世の中を支える“縁の下の力持ち”になってやろうっていう思いから、IT分野を選びました。

甲斐:僕は中学生の時に、Webサイトの制作やデザインをしていたのですが、その公開方法やWebサーバーについての知識が全然なかったので、そういった知識を学んで、自分でサイトやソフトをつくれるようになりたいと思い、IT分野を志望しました。

芥川:僕はみんなに比べて単純かもしれませんが、中学2年生ではじめてパソコンを触った時に、すごく感動したんです。それからずっとパソコンを使用していたんですが、そのうち「使う側」より「つくる側」になりたいと思うようになりました。

———:なるほど。当たり前の話ですが、パソコンや携帯電話など、みなさんの世代ではITは身近な存在になっていたんですね。では、なぜ神戸電子を選んだのですか?

増澤:兵庫県下の情報系の学校のなかで、将来IT系の職業を目指せるなと思ったのが神戸電子でした。4年制のITエキスパート学科を選べば、時間をかけてしっかり学べると思ったんです。

池内:僕はまず関西圏でどこが一番有名か、どこが一番いいのかな、というシンプルな動機で調べていた時に神戸電子を知りました。それで体験入学に来てみた時に、ここでなら自分の学びたいことができるな、と直感的に感じたことが決め手でした。

甲斐:僕も体験入学に参加したのですが、先生方や先輩方がすごく丁寧に学校のことを教えてくれたのが印象に残ったからなんです。「教えてくれる人」がたくさんいる環境、イコール、一番学びやすい場所なのかなと。

芥川:僕は、出身校から神戸電子に進学した先輩に、直接、神戸電子についてお話を聞く機会がありました。「来たら身になることが学べるよ』という先輩のアドバイスを受けて、この学校を志望したんです。

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———:なるほど。志望理由は、みなさんそれぞれですね。では、みなさんが今回つくった ランチャーについて、概要を簡単に説明してもらえますか。

池内:僕たちが開発したランチャーには、“蘭ちゃん”という名前が付いています。機能としては、主に3つ。1つ目はデスクトップの整理機能。Windowsのデスクトップ画面は、Macと違って、ファイルなどのアイコンを自由配置することが基本的にはできないんですよ。でも、蘭ちゃんを使えば、アプリを自由に配置することができますし、パネルをつくって複数のアイコンをグルーピングすることも可能です。たとえば“仕事用”というパネルによく使うアプリをひとまとめにしておけば、わざわざ検索したり、探し出したりする手間を省くことができます。パネルごとにカテゴリ分けをしたり、一度の操作でまとめてアプリを起動することもできます。2つ目は、検索機能。Windowsに搭載されているExplorerは、MacのSpotlight検索に比べて、検索速度がすごく遅いんです。蘭ちゃんでは、検索バーに単語を入力すれば、求めている情報を即時に発見することができます。MacのSpotlight検索にも引けをとらない速度です。コンピュータ内のファイル検索だけではなく、Wikipediaとも連動しており、ちょっとした単語を調べたい時に、わざわざブラウザを立ち上げる必要はありません。瞬時に、目的に到達できる辞書のような使い方もできます。そして、3つ目はカスタマイズ機能。アプリのアイコン画像からパレットの背景まで、ユーザーの好みに合わせて自由にカスタマイズすることができます。

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———: Windowsの検索機能の遅さや機能性の低さに、ストレスを感じていらっしゃる方は多いでしょう。僕個人の感想としては、素で欲しいなと思いました。MacのDock機能、あのアイデアを思いついてデモをつくった開発者は、その仕事ひとつで家が建った、いやマンション数棟分……なんて噂があります。この蘭ちゃんは、そんな可能性を十分感じるほどに、使い勝手がいいですね。アプリをつくるきっかけは何だったのでしょうか。

増澤:仰る通り、MacユーザーがWindowsを使った時にぶつかるストレスがきっかけでした。どうしてMacのような自由度の高い整理ができないのだろう。なぜ検索がこうも遅いのか。

———: Windowsは、Macに比べてデスクトップのUIやUXが遅れているように感じますね。

池内:そういった不満を解消するために、このアプリが生まれたと思っています。

———:ちなみに、このアプリのバージョン対応はどこまで完成されていますか?

木内:WindowsOSのすべてを対象に考えていまして、現在、Windows7以降はテスト済です。

———:GoogleやAppleのエンジニアたちは、アイデアをすぐにプロトタイプに落とし込み、新たな価値をどんどん生み出しますよね。蘭ちゃんにも、そんなスピード感があるといいです。たとえば、開発スピードをアップするために、この蘭ちゃんも、マネタイズできないでしょうか?

池内:僕たちも何度かそれを考えました。お金が目的ではなく、まずはたくさんの人に使ってみてほしいという気持ちが強くて、Web上に公開し、一般の方にもダウンロードしていただけるようにしています。
(リンクペースト 「蘭ちゃん」ダウンロード用HP:launchan.dip.jp)

———:すばらしい考えだ!たくさんの人が求めるサービスであれば、おのずとマネタイズできるでしょう。以前、神戸電子の特別講義に、「CAMPFIRE」を運営されている石田光平社長が来てくださったことがありますが、蘭ちゃんをよりよく機能アップしていくのにクラウドファンディングを活用して資金集めをするのもいいかもしれませんね。今の時代、サービスに価値があれば、応援や寄付という形もある。このサービスをきちんとアップデートしていけば、ニーズはとても強く広いものだと感じました。UI/UXに関してはMacが先行していますが、ユーザー数に限って言えば、Windowsの方が圧倒的に多い。Windows関連の課題解決は、大きなビジネスにつながる可能性を秘めているし、このサービスはとてもタイムリーでしょうね。学習の成果物で終わるのではなく、早く世の中に出して欲しいなと思っていたので、今日「蘭ちゃん」のWebサイトを見ることができて安心しました(笑)。リリースに向けてもきちんと手を打っていることに、感銘を受けました。

全員:ありがとうございます!

———:神戸電子では、来年から新たに「Webエンジニアコース」を新設する予定です。Webサービスを創造できるエンジニアを育成するコース。そのカリキュラムの柱となる領域は「ビジネス」「デザイン」「プロモーション」。この中で一番難しいのがビジネスだと思っています。今は、学生という立場だから、自由に時間を使えるだろうけど、卒業後もこのサービスを継続していくならば、どこかでマネタイズという問題にぶつかってくるはず。どうやって自分たちのクリエイティブを、サービスや商品を、お金に変えていくか。正解はひとつじゃないだろうし、日々、どんどん進化していくので、そこにアンテナを張っておくことが大切ですよね。

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———:世間では、それほど話題にされていませんが、神戸市がITを中心としたスタートアップの直接的な支援として7500万円の予算を設けることを決めています。全国でも初の試みではないでしょうか。たとえば、君たちのような若いチームが「アプリを世に出したいが、資金がない」といった時に、市が助成金を出してくれる可能性もある。

池内:それって、自分たちで志願すれば、市が支援金を出してくれるってことですか?

———:そうです。具体的な開始時期はまだ未定のようですが、おそらく遠くない話ですよ。また、スタートアップを志望する人たちが集まる「場所」を、三宮駅前につくるという構想も動き出しているし、優秀な人をシリコンバレーに派遣するという案もあるようです。起業という選択肢は、こあれまでハードルが高いものだったと思いますが、さまざまな支援が出てきたので、みなさんも是非ウォッチしてみてください。ようやく時代が動き出しました。遅いぐらいですが、日本初のスタートアップ支援の試みが、この神戸で起こるのは嬉しいですよね。

池内:そうですね。そういうチャンスが近くにあるのであれば、ぜひ参加してみたいなと思います。

———:それから「Code for Kobe」をご存知ですか。神戸という地域が抱える課題を、テクノロジーを活用して解決しようというコミュニティです。若いITエンジニアが集まっているので、在校中に交流してみるといいですよ。では、最後の質問ですが、蘭ちゃんの運営は、今後も継続していくのですか?みなさんの展望を教えてください。

池内:僕はもっとスマートフォンを便利に使いたいと思っていて、蘭ちゃんをAndroidに対応させたいと考えています。なので、Androidの開発環境を勉強しています。

芥川:僕も「蘭ちゃん」をより便利に、使いやすくしていくために勉強中です。

甲斐:今は授業で学んだことを蘭ちゃんで復習をしている感じです。とくに力を入れたいのは、注目を集めているコンテナ型の仮想化ソフトウェア「Docker」。今回の「蘭ちゃん」の開発にも取り入れています。

増澤:僕は、今回Webページのコードを組む際に、知識が浅く、時間がかかってしまったんです……。これからはどんな情報にも、Webの知識は必要だと思うので、もっと勉強したいと考えています。

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———:とても情熱的な姿勢に感銘を受けます。これだけの意欲と技術に満ちた人たちが集まっているのですから、多くのチャンスがやってくるでしょう。ぜひ学校を飛び出して、世界の最先端に食らいついていって欲しいです。本日はありがとうございました。みなさんの今後のご活躍を期待しています。

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神戸の未来を担う場所と文化 「未来都市創造に関する特別委員会」

2015.4.20

CATEGORIES:国内 ,神戸

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昨年、神戸市役所で行われた、神戸市議会「未来都市創造に関する特別委員会」に参考人として呼ばれました。質疑応答含め、3時間にも渡り「若者の集う街」テーマでプレゼンと討論をしたのですが、若い人たちはいつの時代も活気の象徴であり、彼らが集う場こそ「これからを生きていく街」なのだという考えを共有した、とても心地の良い会でした。このテーマ、全国的に若者が急激減少する今、市町村問わず優先して向き合うべきものではないでしょうか。次回5月11日の「未来都市創造に関する特別委員会」市民報告会に先立ち、前回の様子をお伝えしたいと思います。

若者が集うためのアイデアとして、2つのことを話しました。豊かな市民活動を享受する「場」の必要性と、上質な音環境を尊ぶ「文化」についてです。
 
国土交通省が発表した「国土の長期展望」はご存じでしょうか。直後に東日本大震災が起こったため、一般紙では大きな扱いとなりましんでしたが、多方面で議論が百出しました。国は2050年には全国6割もの市町村の人口が半減すると予測。半減….. 教育や医療といった重要な生活インフラが維持できなくなると言っているわけです。そんななか、東京、名古屋、大阪、沖縄のみは、今よりも人口が増えるとも予測。今以上にある種極端な都市化が進むとしています。この予測を好む人は少ないが、まぁそうなるのだろうねと受け入れている人が多いように思います。
「街づくり」は人口問題と切り離せませんが、とくに若い人は、次の時代を担い、地域再生のカンフル剤のような役割も担う存在です。では、どうやって若い人を集めるのか?

若いエンジニアやクリエイターを集めることからはじめてはどうでしょうか。あらゆるビジネスがソフトウェア化していく今、企業誘致と同じかそれ以上の熱量でもって推し進めるべきは、高い技術力を持つエンジニアと、とてつもなく面白いクリエイター達の誘致だと考えます。クラウドをとことん活用し、オフィス不要。ビジネスや生活向上に向けた面白いアイディアを、自分たちの手でどんどん’カタチ’にしていくことができる人たち。社内ではなく、アウトソース先のパートナーとして、各地に雇用も産み出せるような人たち。ネットやITがどんどん世を変えていく世紀(真のIT革命はまだまだこれからです)の成功の鍵を握る存在といえるでしょう。彼らは全国どこでも好きなところに住む場所を選ぶことができる。寛容性が有り、とにもかくにも心地よい場所を求めるはずです。
彼らが惚れ込み、住みたくなるような環境をつくり、インフルエンサーとして神戸の魅力を若い世代に発信してもらう。企業のマーケティングも最初の一歩はターゲットを定めることからはじめますが、神戸が今、注力すべき’顧客’(ニーズをウォッチすべき対象)はエンジニアリングやクリエイティブな力をもった若者たちではないでしょうか。
この視点は、これまで別個であった産業振興(産業誘致)施策と住民生活環境整備施策が同じになるという大きなメリットを産み出します。

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重要なのは「場」の魅力です。具体的な施策として「デザイン都市・神戸」創造会議でもお話した「東遊園地公園の芝生化」などは小さなものですが、神戸の心地よさを格上げし、対外的な発信に一役かうものだと思います。市民が良い意味で、まちを所有する感覚を持てるよう、日常的なイベントが多発するアウトドアリビング的な公園として再生したいものです。このコンセプトは、神戸モトマチ大学の村上さんや、神戸R不動産の小泉さん達と議論する中で生まれました。

ニューヨークの「ブライアント・パーク」のように、Wi-Fi環境を整備できれば素晴らしいです。海外によく出向く方はご存知だと思いますが、日本は無料のWi-Fi環境の整備が遅れています。都心の公園に、誰でもWi-Fiを使うことができる公園があれば、平日にクリエイターたちがノマドワークをしたり、休日には家族を連れて余暇を過ごしたり、市民団体がワークショップを行うこともできるでしょう。市民で「シェアする公園」が、新しいアイデアやビジネスを生むプラットフォームになるという発想です。「東遊園地公園に行けば、何かおもしろいものや人に出会える」。これが神戸の常識となれば、世代を超えて、都心から同心円上に活気が広がっていくのではないでしょうか。

産業資源の集積に加え、こういった生活の心地よさが高まっていくことの重要性を強く感じます。実際、アメリカの若いクリエイターたちは、ナイトライフに乏しいシリコンバレーから、コワーキングスペースが豊富で、ファッションをはじめ文化の成熟したサンフランシスコに続々と移住しています。

今の日本では、それぞれの市民が公共の場所を「保有」するという感覚は薄いように思いますが、これからの若い人たちは、こうした「場所」を求めているのだと思います。

もう一つのお話。音楽や音を尊ぶという「文化」についてです。
(以後、追記します)

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