すっかり秋の装いになりましたが、記憶の整理も含めて夏の思い出を振り返ってみます。今夏、思い出深い出来事のひとつが8月に開かれた生田神社の夏祭り「大海神社祭(たいかいじんじゃさい)」です。
神主さんより、神戸電子で「夏まつりのサウンドステージを受け持ってもらえませんか?」とお声がけいただき、サウンドテクニック学科の教員、学生とでお受けしました。生田神社さんとは、僕が代表世話人をしている「音楽のまち神戸を創る会」の事業の一つ、「市民が街中で音楽を楽しむ」活動 ‘078’ を神社内で開催させていただいてからのご縁です。078では、当初「境内」での演奏と聞いていたのですが、フタをあけてみたら舞台はなんと「本殿」。雅楽上演の前に、アンビエントな電子音楽を奉納として響かせました。
生田神社は神戸という地名の由来として知られています。日本書紀にも記述が残る由緒ある神社で、ふだんは静かで厳かな空気に満ちています。しかし、この夏祭りに限っては、静から動へ、およそ神社の催しとは思えないような盛り上がりを見せます。境内に音楽ステージやDJブースが組まれ、ジャズ、声楽にロック、アイドルユニットによるライブやダンスなど、さまざまな催しが続きます。規制の多い日本の都市部でこれだけの音量を許容し、広く若者文化を受け入れている神社はそうそうないでしょう。さらに、日暮れからは夜店ブースが開き、神戸・灘の蔵元である剣菱酒造や神戸ワインをはじめ、地酒がずらっと並びました。
アッパーな電子音が響く本殿前で踊るダンサーの姿、お酒を片手に境内で沸き起こるコール&レスポンス……神社であることをつい忘れてしまうような盛り上がりを見せます。しかし、古来より縁日には芸能の奉納が付きものであり、“人が集まる場をつくる”という意味において、神社はオーガナイザーのような存在だったのでしょう。そこでは、笛や鉦の音はもちろん、音頭にあわせて“舞い”があり、お酒で神様を迎えたわけです。人が集まる場所をつくるための手法はたくさんありますが、あらためて“音楽とお酒”の力、そして日本古来のお祭りの魅力を感じました。
さて、神戸電子は今回、3日間にわたってサウンドステージを任せていただけました。ステージの設営から音響機材の調整、運営の進行まで、サウンドテクニック学科の学生が精一杯の力を発揮してくれたように思います。やるからには、毎回、音の解像度にこだわった音出しをこころがけていますが、今回もオーディエンスの皆様、一様にそこを評価するお言葉を頂きました。今回サウンドステージを任せてくださったのは、このこだわりへの信頼があってこそ。降り止まない雨や突然のトラブルにもめげず、学生たちも素晴らしい“奉納”ができたのではないでしょうか。
生田神社の方々も喜んでくださったようで、すでに来年の続投要請も。今年以上に、壮観なお祭りになるよう頑張りたいと思います。