神戸メリケン薪能、あいにくの雨天で会場を神戸国際会議場に移し、和ろうそくを灯しての開催となりました。
開会の挨拶とろうそくへの火入れ式をやりましたが、これがまたなかなか点かない。ただ灯ってからは芯の太いあたたかい炎がなんとも言えない空間を創りました。写真は狂言「棒縛(ぼうしばり)」。
能「船弁慶」は地元の題目であり、海外上演回数が最も多いのだとか。鼓等和楽器の音と能楽師の足踏みの旋律がダイナミックで私のような初心者や外国の方には見応え聴き応え有る能でした。生音伝達を前提とした能楽堂とは違い、700名程が入る大ホールでPAを用いての上演。メリケンパーク広場向けに準備された音響セットとは違う代替え対応なりにということもあったのですが、音響面では大きな課題を認識しました。マイクを通す音声とそうでない音声との違いで、音の旋律が崩れるんですね。我が国を代表する伝統芸能なだけに、ここはエンジニアリングが解決しなければならないところ。総合監督や能楽師が気づかないところ、なんとかしたいとの思いを持ちました。今回文化庁の予算での開催でしたが、来年再来年と継続できるようであれば、次こそは屋外で。そして能楽堂と同等以上の音空間を創出したいと思いました。
リーフレットに掲載した挨拶を転載します。
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本日、進取の気風溢れるこの神戸の港にて、かがり火に映る幻想的な
薪能公演が実現することに深い感謝の念を捧げます。
皆様ご存じの通り神戸は、生田神社に奉仕する民、神部の集落が中央区一帯を
占めていたことがその地名の由来とされています。同神社は日本書紀にも記され
西暦700年代にはすでに現在の地に社が建っていたとの記録が残り、当地の歴史
の深さが伺えます。
明治開港以降、神戸は世界からモノや情報、システムなどありとあらゆる
ものを受け入れる、言わば西洋文明の玄関口として栄えてまいりました。
そして2008年、神戸はユネスコ創造都市ネットワークのデザイン都市にアジアで
初めて認定されました。市民のライフスタイルから街の情景に至るまでを果敢に
デザインしていく創造都市へと歩を進めています。
この極めて21世紀的なビジョンを掲げるこの地で、そのイメージを代表
する港を舞台に、同じユネスコ無形遺産に初回認定された日本の伝統芸能
能楽を観賞いただく。経済や情報のグローバル化と時を同じくして、国や地域の
アイデンティティ追求が高まっていることとの関係性を感じずにはおれません。
脱亜入欧で駆け抜けた150年を卒業し、日本そのものへと回帰する今
「温故創新」に向け、我が国文化古層の代表格をお楽しみ頂ければ幸いです。
開催にあたり、ご尽力頂きました関係者の皆様に深く感謝申し上げ、
ごあいさつとさせていただきます。
神戸伝統芸能普及の会 会長 福岡壯治
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