千葉の幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ」が今年も大好評のうちに幕を閉じました。総入場者数は25万人超! 今年は国内外から421の企業や団体が参加し、過去最高の出展数だとか。世界中でプレイされているコンピューターゲームの一大祭典が、この日本で開催されているのは誇らしいことです。
著名ゲーム企業が多数ブースを連ねるなか、神戸電子の学生たちもブースを出展しました。教育機関のなかでもいち早く東京ゲームショウに参加し、今年で16年連続の出展になります。
ブースでは、PC7台とNexus 7を1台使い、学生たちが制作したゲームを紹介しました。実際にプレイすることもでき、多くの来場者が訪れてくれました。ありがたいことです。
かつて私もゲームソフト会社で働いていた経験があるので分かるのですが、自分たちが思いを込めてつくったゲームも世に送り出した途端、自分の手を離れていきます。たとえば、ユーザーがどんな風にプレイしているのか、どんな表情で画面に向き合っているのか……それを確かめる機会は意外と少なかったりするものです。
ゲームショウは、自分たちがつくったゲームをユーザーがプレイする、それをリアムタイムで見ることができる貴重な場です。ものづくりにおいて、「使い手」の顔を近くに想像できる人は、優秀な「作り手」になります。ゲームソフトを制作し、出展し、ユーザーの反応にじかに触れることができるこの体験は、学生たちにとって大きな財産になるでしょう。来年も楽しみです。
さて、僕はゲーム会社で働いていたと前段でも説明しましたが、かつて構想していたゲームのコンセプトが今年、スマホゲームとして発表されました。そのゲームが「東京ゲームショウ」に出展していたので、少しこれにも触れておこうと思います。
だいぶ昔の話になりますが、僕は専門学校と大学の両方を経験しました。当時あった神戸電子の夜間部で学んだプログラミング技術を手に大手ゲーム会社に就職し、ゲームソフトプログラミングの仕事をしていました。世界的ヒットになった「メタルギア」シリーズ初の海外版「Snake’s Revenge」の開発チームにもいたんですね。余談ですが、海外ではミリオンヒットし、その後の「メタルギア」本体にも影響を与える分岐点のような作品になったといわれています。ボス敵プログラミングと後半のマップを担当しました。
本題に戻りますが、その後、仲間とベンチャー企業を立ち上げて、自分たちのアイデアをゲームとして世に送り出そうと動いていた時があるのですが、残念ながらそれはカタチにできませんでした。ところが今回、その20年以上前の構想を元にして世に出たゲームが、今回出展された「NAZO」です。当時の仲間であり主たる発案者が、そのアイデアを土台に温め続け、実際のゲームとしてカタチにしてくれました。
「NAZO」は、サイバードという携帯電話向けのサービス配信を中心とした会社からリリースされています。名前のとおり、謎解きがメインのアドベンチャーゲーム。ティザーサイトはこちらでです。映画の『MEMORIES』『鉄コン筋クリート』などを手掛けたアニメーションスタジオ「STUDIO4℃」や、日本を代表する編集者の松岡正剛など、そうそうたるメンバーが制作チームに名を連ねていることもあり、業界では話題になっていたようです。ビジュアルやストーリー、音楽、どれも手を抜かずクオリティが高く、単にコンシューマーゲームを真似ただけのスマホゲームとは、ひと味違うワクワク感を得られます。
期間限定で、すべての謎を解き明かしたユーザーには、「宝」なるものが提供されたり(何かは言えないのですが、実物としてもらえる)、ユーザーからの課金が貧困で悩むベネズエラのチャリティ支援に使われたりと、ゲームの世界を乗り越えて、現実世界への波及を狙った意欲作です。
あの時は実現できなかったゲームが、こうして本当に形になるなんて……あきらめずに夢を追いかけることの大切さを教えられたように思います。