医療やエンタ−テインメント、自動車産業など、幅広い分野で使用されている3Dプリンタ。神戸電子でも、インダストリアルデザイン学科で3Dプリンタを用いた授業が行われており、先日は同学科の川口先生が、「公益社団法人 大阪府工業協会」主催の3Dプリンタセミナーに、講師として招かれました。
今回は2回に分けて、川口先生に、インダストリアルデザイン学科の取り組みや、今後の展望、3Dプリンタセミナーの感想などを伺いたいと思います。 まずは、セミナーについて。
神戸電子が3Dプリンタを導入したのは2014年の4月。しかし、3Dプリンタを活用している方々は以前から企業や個人を問わず、他にもたくさんおられます。そのため、川口先生も3Dプリンタセミナーの講師依頼に対して「どうして自分に?」と疑問に思ったそうです。
理由は明白でした。それは、神戸電子では3D-CADを活用した試作品製作にパーソナルタイプの3Dプリンタを活用し、試作品を低コストでコンスタントに製作するという事例を数多く持っていたからです。じつは、みなさんが想像されるようなとても精度の高い高性能3Dプリンタは、ランニングコストがかかるハイエンドタイプと呼ばれる機械に分類されます。
精密なものを出力することができますが、加工時間や、樹脂のコスト面、維持費などから生産性は低くなるといったデメリットがあります。そのため、一人ひとりの学生が作品を製作するための機器として利用するには、ハイエンドタイプは向いていません。
多少精密さには欠けてしまいますが、加工時間が早くて生産性が高い、比較的コンパクトなサイズの制作に向いたパーソナルタイプの3Dプリンタを神戸電子では導入しています。 ものづくりに携わっている多くの事業所の方々にとって、3Dプリンタを導入したいと思っても、何千万もするハイエンドタイプの機械では生産性と資金面で少なくないリスクを負うことになります。
「現実的に比較的コンパクトなコストで、生産性を保ちながら3Dプリンタを活用している事例やその可能性を学びたいというニーズと、実際にその事例を持つ神戸電子が今回はマッチしたのではないか」と川口先生。企業の求めるモデルケースのひとつが神戸電子にあったため、導入の判断基準を企業の方々には得ていただいたのではないでしょうか。
ここで、パーソナルタイプの3Dプリンタを導入している神戸電子では「ハイエンドのタイプを使った作品はつくれないの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大きな作品や、校内での製作ができないものに関しては、外注での製作をしています。
何千万円もするような3Dプリンタは本校にはありませんがそれは、いかに「市場の感覚と同じ感覚を持つ作り手を育てるか」に焦点を当て、そのためにどういった機材を揃えるかを考えているからです。
神戸電子で学びを培った学生諸君は、社会に出た際、実質的な即戦力として第一線で活躍する専門学校職業人の入り口に立てていることでしょう。
次回は、インダストリアルデザイン学科自体を少し深掘りします。