4/29 (金)08:30~

さくまあきら氏スペシャルセミナー(後編)

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2011年4月29日「神戸電子専門学校」ソニックホールにて

神戸電子専門学校を会場にしてのACF(アジアコンテンツフェスティバルin神戸)ゴールデンウィークスペシャルの初日、あの桃太郎電鉄の生みの親、さくまあきらさんのスペシャルセミナーが行われました。今回は、スペシャルセミナー再録の第二回です。


●横浜優勝の年、追っかけすぎて「桃鉄」が飛んだ!

-「桃鉄」シリーズは、毎年出しているんですよね。

さくま:はい。毎年です。でも訳ありで1度だけ出なかった。1998年です。なぜなら、横浜ベイスターズが優勝しそうな気配だったので、「仕事はしません」と宣言して、球団を追いかけてしまったからです。

-シーズン中、横浜の追っかけをやってしまったということですか?

さくま:……はい……。甲子園球場で、優勝の瞬間を見ました。

-何試合くらい追っかけたのですか?

さくま:ほとんど全部です。あらゆる球場での試合を全部買って。それこそ友達だのみですよ。その業界の友達に融通してもらって、ほとんどのチケットを揃えたんです。で、終わって気がついたら僕、ラジオ番組のレギュラーが3本増えていた。無理を言ってチケットを融通してくれた友達に、「これだけ協力したんだから、ラジオやってくださいね」って言われたんです。

-長年のベイスターズファンなら、あの年は応援したかったでしょうね。

さくま:38年優勝していなかったからね。これはもう行っておかないと。

-で、その年は「桃鉄」が出なかったわけですね。いやあ、1本飛んでいたとは、知らなかったですねえ。


●震災で物件が被災……復興を願って、今年は発売中止

さくま:実は、今年も出ないの。

-おや、それは一体どうしてなんでしょう。

さくま:ベイスターズは関係ないです。シナリオも完成していたんですが……東日本大震災が起きました。うちのゲームには、あの土地の物件も全部入っているんです。津波の映像を見ていると泣けてきちゃうんです。実際に歩いたところが、みんな流されてしまったから。今、そこには物件がないんですよ。

-リアルにないんですね。

さくま:そこに物件がないのに、知らん顔して出すのはおかしいでしょう。だから今年はやめようと決めました。そして復興して再開したところを取材して、来年以降出せたらいいなと考えています。日本一赤貝のおいしいお店なんかも、ネットだけでしか状況がわからなくて……。お店の人がやっていたツイッターが、「今日もいい天気だ! 一日頑張ります」というつぶやきを最後に止まったままだったりするんですよ……。

-心配ですね……。

さくま:でも、うちの家内がその店の社長さんの名前をインターネットで調べて、色々問い合わせていたら、避難所にいたことがわかったんですよ!そういうこともあるから、向こうの人たちがお店を再開したら、また取り上げるんです。今年1年間はみんな精一杯頑張って、来年以降きっと復活できると思うんですよ。

-なるほど。

さくま:中止を発表したとき、被災地の人から「出してほしい」っていう声があってね。びっくりして、一瞬どうしようかなと思ったんだけど、さすがにちょっと間に合いそうになかった。

-仕方ありませんが今年は出ない、ということですね。


●世界旅行に行きたくなる、初の世界編「桃太郎電鉄WORLD」

さくま:ケータイのほうでは、種類がたくさん出ています。近畿、中国、四国とか、そういうエリアは1周したので、今度は青森とか各都道府県をピンポイントで行こうかと。5月1日からは静岡が出ます。静岡だけの「桃太郎電鉄SHIZUOKA」。

-ずいぶんローカルですね。

さくま:今、東海地方の三重県、愛知県、岐阜県の3県をまとめたものを制作中です。取材の真っ最中。

-さくまさんは、どれくらいのペースで取材に行かれるんですか?

さくま:1年の3分の1くらいが取材でしょうか。100日ちょっと。

-残りは?

さくま:仕事をしています。

-じゃあ全部仕事じゃないですか(笑)。

さくま:そう、僕って仕事しかしていないんです。電車に乗っている間もずっと何か考えてる。趣味は仕事です。テレビの企画、出版の企画などを考えるのも大好きなんです。楽しいから。いわば国王みたいなもので、好きにつくれる。だから楽しい。

-現在発売中の「桃太郎電鉄WORLD」は、どんな内容なんですか?

さくま:「桃鉄」初めての世界編です。

-さくまさんは飛行機が嫌いだと聞いたことがあるんですが、「桃太郎電鉄WORLD」はどうやって取材したのですか?

さくま:そう、飛行機には乗れません。僕は北海道にも電車で行きます。実は、ありとあらゆるDVDを見てつくりました。

-(笑)

さくま:200枚くらい見ましたよ。ナポリならもう歩けます。行ってないけど(笑)。だって、いずれにせよ全部は回れないでしょ。戦場カメラマンの渡部陽一さんだって、20カ国ぐらいですよ。日本編の場合は、地元の方が買ってくれるわけだから、やっぱり実際に行ってないとダメです。でも「桃太郎電鉄WORLD」はそうじゃないでしょ。そこに行ったことのない日本の人が行きたくなるようにすればいいと考えたんですよ。

-なーるほど!それだけのDVDがあれば、すごく勉強になりそうですね。

さくま:うちのスタッフは異様に世界地理に詳しくなりました。テレビのニュースが楽しくなったと言っています。どこそこで事件が起こった、とかね。

-その場所がすぐわかりますもんね。

さくま:「あっ、2マス目だ」なんて言ったりしてます。

-マス目で言っちゃうんですか。

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●元祖「桃伝」「桃鉄」のプログラマーから生まれたiPhone版

さくま:iPhone版の「桃太郎電鉄JAPAN+」の評判が良かったんですよ。やっぱり、指でタッチして送るのがいいみたい。

-ああ、そこはガラケーよりいいですね。

さくま:24年前に「桃太郎伝説」「桃太郎電鉄」のプログラムをつくったハドソンのプログラマーが、「iPhone版をつくらせてくれ」と20年ぶりに現れたんです。その男が、天才なんですよ。本当にうまいの。ただ、iPhoneを持っている人はまだ少ないですよね。東京だけなんですよ。しかも、渋谷と六本木だけ。小田原へ行ったら誰も持っていない(笑)。ギャラクシー・タブもいいですよねえ。あれはほしいなあ。

●「桃鉄」の未来は? 現在、色々な可能性を模索中

-今後、「桃鉄」シリーズをどう進めていくのですか?

さくま:今、それを色々と考えているところなんですよ。まだはっきりしない部分も多くて、確かなことは言えないのですが、「日本のいいところを紹介する」という基本は変わりません。しばらく青森に凝っていたので、今度は九州あたりに行こうかなと……

-「桃鉄」の未来計画はまだ思案中ですが、これからも面白いことをやっていくぞということですね。

さくま:もう来年は還暦なんですよね。

-そうなんですか?!全然60とは思えないです。

さくま:自分でも思わないんだけど、しょうがないよねこればかりは。

-:今日はありがとうございました! あと40年くらいは続けてくださいね!

さくま:無理だって(笑)。
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[プロフィール]
さくまあきら氏
東京出身、1952年生まれ。『桃太郎電鉄』シリーズのゲーム監督にして生みの親。ゲーム製作のために全国各地を駆け巡り、自らの目と舌で情報収集を行なっている。物件駅に登場させる食べ物は、自身が「美味しい!」と感じたものだけなのだとか。

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