超スパルタの漫画塾が輩出したスゴい漫画家たち!
聞き手:漫画といえば、さくまさんは小池一夫さんの学校(劇画村塾)の
生徒でしたね。
さくま:小池一夫さんは、『子連れ狼』の原作者として有名です。
その頃始まった学校だから、もう30何年前かな?1期生には面白い人材が
集まるってよく言うから、入ってみました。どうせ適当な学校だろう、と
思っていたんですが(笑)、
ものすごいスパルタだったんです。1週間で、32ページの漫画の原作を
書いて来いと言うんですよ。ここ学校じゃないの?と思ったんですが、
「お前らプロになりたいんだろう?!プロはみんな毎週32ページ
書いてるじゃないか。漫画家になりたかったら書けるはずだ!」と
言われました。
で、そのときの同級生が、『めぞん一刻』とか『うる星やつら』の高橋留美子、
後輩が『北斗の拳』の原哲夫。大学で同級生だった堀井雄二は実は3期生。
後輩なんです。彼の同級生にも有名な漫画家がたくさんいます。
そういった友達がいるから、困ったときに必要な情報が得られるんです。
聞き手:苦労話を教えてもらえますか?それとも、
楽しんでやってらっしゃるから、苦労らしい苦労はないのでしょうか?
さくま:アイデア出しは辛いですけれど、基本的に楽しまないとダメな
タチなので、開発は楽しいですね。自由気ままにつくれますから苦労は
ないですね。
聞き手:最近のお仕事や作品を、映像を見ながら紹介していただきましょう。
さくま:(CM映像を見ながら)これは千葉県・銚子電鉄の電車で、
「桃太郎電鉄」がペイントされており、駅も「桃鉄」とコラボレーションしています。
他地方の路線ではやらないんですよ。1カ所だけの方が希少価値が
あるでしょう。これは、「桃鉄」制作のための取材で銚子電鉄の方々と
仲良くなったので、話を持って行って実現したものです。ここに出てくれている
タレントの山本梓さんは、うちのゲームのファン。
CMに出てもらうのは、「桃鉄」が好きな人でないと、それがお客さんに
伝わっちゃうから。ゲームのファンだと、演じているときの顔つきも違うんですよ。
いい笑顔でしょう。
チーム戦が楽しめる新作に期待。
聞き手:今日は「キングボンビー」(「桃太郎電鉄」のキャラクターで、
パワーアップした貧乏神の最終形態)が来ているので、出てきてもらいましょう。
(キングボンビー登場!)
さくま:キングボンビーはとても人気のあるキャラですね。このキャラのヒントは、
昔放送されていた「とんねるずのみなさんのおかげです」という番組です。
木梨憲武扮する「仮面ノリダー」の相手が「キングジョッカー」だったのですが、
このキングジョッカーを見たときにキングボンビーが僕の頭の中に
“降りてきた”んですよ。
ところで、過去の悪役はほとんど23画という画数の名前をつけています。
姓名判断で、23画というのが非常にいいみたいで。300以上の名前のストックも
あるんですよ。そこはこだわってますね。
(映像を見ながら)これは、持ち金が2倍になる「持ち金2倍マン」。
イラストの土居君が昔、少年探偵の漫画のときに使っていたキャラクターを
アレンジしたものです。
最近の仕事といえば、7月発売予定の「桃太郎電鉄タッグマッチ」ですね。
最初は、単にPSPへの移植の予定でつくっていたのですが、それでは
お客さんが面白くないだろう、ちょっとぐらい新しくしてみようかなと
思ったんです。そこで、前からやろうやろうと思っていてできなかった
タッグマッチモードのシステムを取り入れてみました。これまでは
1対1だったのを、2対2や1対3など、チームで競うことができるように
なったんです。カードは共有で、持ち金はバラバラ。
2対2でやったとき、テストプレイ中、みんな抱腹絶倒だったんです。
例えば、カード売り場で買った「特急カード」を、仲間が使っちゃうんですよ(笑)。
また、自分がゴールしても、仲間が遠くにいるとキングボンビーがそっちに
ついちゃう。けっこう頭使いますよ。これはほんとうにみんなで楽しめると
思います。
こだわりのグルメ、語り始めると止まりません。
聞き手:はじめにお話しいただいた青森以外で、おすすめのグルメを教えて
いただけますか。
さくま:愛媛県松山市のとんかつパフェ。フルーツパフェにとんかつが刺さって
います。おいしいんですよ。近所にもしあの店が普通のとんかつ屋として
あったら絶対に食べにいくぐらい、おいしいです。道後温泉にありますよ。
安田大サーカスのクロちゃんもそこのとんかつパフェ食べておいしいって
言ってましたから。 『桃鉄ごはんB級グルメ旅』という本は知り合いの出版社
から出させてもらいました。変な食べ物がいっぱい載っています。
さきほどのとんかつパフェも載せました。地域によって分かれていて、
3種類出しています。
聞き手:では最後に、さくまさんから激励の言葉をいただくことにしましょう。
さくま:とにかく友達を大事にすること。何になるかわからないから。とくに、
自分と違う才能を持った人間とたくさん友達になってください。
最後はじゃんけん大会!
会場全員が立ち上がって、さくまさんとじゃんけん対戦!プレミアムグッズが
プレゼントされるとあって会場は大いに盛り上がりました!
●セミナー後インタビュー
身近な友達と、ゲームを超えた新しいものをつくりだしてほしい
ここ数年、ゲーム業界でプログラマやクリエイターなどを目指す若者に対する
セミナーが増えてきました。かつて、子どもの頃ゲームに親しんだ世代が、
彼らの親世代になってきているからでしょう。
僕のセミナーのネタは、いつも“友達”。実際、僕自身が友達とのつながりの
おかげでゲームをつくってきたからです。今日の話に出てきた友達も、
名前だけ聞くと「すごい!」って思われるかもしれないけれど、それは結果的に
そうなっただけ。今の友達は大学時代のつながりが中心だけど、それぞれの
得意分野を活かして、ワイワイと楽しく遊んでいただけです。大体、僕らの若い
頃は、まず今のようなゲームなんてなかったし、ゲームを仕事にするなんて、
まともな社会人とは絶対認められませんでした。この時代になって、ゲームが
やっと職業として認知されるようになってきたんです。
自分の周りの友人だってどんな才能を秘めているかわかりません。
将来、お互いの力を活かしあってすばらしいものが生まれるかもしれません。
その可能性は誰にでもある、それを分かってもらえたら嬉しいです。
“友達を大事にする”以外にもうひとつ大事なことを申し上げておきます。
それは、「得意なジャンルを3つつくる」こと。
それも、誰も知らない、やっていないようなことです。それがきっと皆さんの
大きな強みとなることでしょう。
今日のセミナーで感心したのは、学生の皆さんの質問が非常に実践的な
内容だったことです。将来が楽しみですね。皆さんに期待するのは、
単にゲームをつくるのではなく、ゲームを超えた何か新しいものを生み出して
ほしいということ。そういうものを、身近な友達と構成していけたらどんなに
素晴らしいでしょう。
以上