2011年5月29日「神戸電子専門学校」ソニックホールにて
この日は、神戸電子専門学校を会場にしてのACF(アジアコンテンツフェスティバルin神戸)ゴールデンウィークスペシャルの初日。
そのスペシャルゲストとして参加した、YMCKにより、ライブ&サウンドセミナーが行われました。今回は、サウンドセミナー再録の
第二回です。
●8bitへのこだわり
-YMCKの音楽は、除村さんのお話でもおわかりのように、プログラミングとクロスオーバしてる魅力があります。それと同じく、中村さんの担当しているアニメーション映像も音楽にクロスオーバしてると思うのですが、こちらは中村さんお一人で作っているんですか?
中村:だいたい一人でやりますね。ただ最初のアイディア出しは結構みんなと相談したりしますね。
-こんなソフトがファミコンであったらなーって感じのビジュアルだと思うんですね。でも、実際はファミコンの動作とは違う動きをしていますよね。
中村;そうですね。ファミコンって限定すると難しいので、昔のゲームセンターのゲームくらいの性能まではいいかな?と…
除村:そこがいつもどうしようかって話になってます。本当にファミコンにこだわって8bitの中だけでやるか。でも、それだとつまんなくなっちゃうことがあるんですよね。
中村:あくまでファミコンはベースであれば。
-やせ我慢なとこでもありますね。例えばPS2までは行っては行けないとか。
除村:そこまで行くと、ぼくはもうNOを突きつけて(笑)
栗原:次のPVは…ポリゴン?
除村:(笑)
中村:スーパーファミコンでも「スターフォックス」ってソフトでポリゴンありますから
除村:あるんでしたっけ?
中村:メガドライブもありますし。16bit時代でもポリゴンあります。
-なるほど、ギリギリありでしたね。
●アニメーション表現のひみつ
-あのアニメーション自体はどういった順序で作るのですか?
中村:だいたい、すぐに曲ができちゃってそれに合わせて作ります。
除村:曲に関しては、アイディアをまとめるのには、曲によって違いますが早いやつだと3日くらい。展開が追いつかなくて、1ヶ月くらいかかって作っていくのもあります。
-それに合わせてシンクロしながらアニメを作って行くと。もちろんPCを使っているとは思っているのですがツールは、なにをつかっているのですか?
中村:そんな珍しいものは使ってなくてフォトショップとアフターエフェクツです。
除村:フォトショップはドットでかくとして最強だと思います。
中村:こだわっているのはマウスだったりしますね。ドットを打っていくのでマウスが重要なんです。僕は初代iMacの、まあるいやつが使いやすいんです。人によると思うんですが、僕はオークションで2、3個まとめ買いとかしてます。
除村:まとめていくらぐらいなの?
中村:1000円くらい(笑)世間では人気ないんですよ。ボールマウスですし。
中村/除村(笑)
-ビデオ、アニメーションを作らない曲って、これまでにあるんですか?
除村:あるんですけれども、ライブをやるときは必ず作ります。ない状態のやつはまだ映像がないからとって、ライブでやらないだけ。ライブでやりたいなと思ったら映像を作ります。
-あと最近お仕事の中で印象的だったのは、テレビアニメ「アラド戦記」のお仕事ですね。既存のアニメ作品のYMCKバージョンをお作りになっているようですが、あれはどういうような行程ですか?やはり最初に曲があってから?
中村:そうですね。あれは珍しく僕が曲部分もやってるんです。
除村:実は結構お互いの領域を行ったり来たりしているんですね。みどりが曲を書く事もあるし。割と領域をまたいで、3人でやっている感じです。
-作品ごと、1曲ごとのコンセプトみたいのは3人でミーティングして方向性を決めるというかたちですか?
除村:「アラド戦記」に関しては中村が曲も映像も。
-既存のキャラクターのアレンジバージョンみたいな形でやってらっしゃいましたね。話変わりますが、YMCKキャラクターのパターンは数年前とちょっとずつかわってらっしゃいますよね?それはやっぱりブラッシュアップしていって今の形になってるわけですか?
除村:そうですね。
栗原:でも前のはもう使わないとかって訳じゃなくて、曲によっては出る時もあります。
除村:僕が、最初に作った元のキャラクターがあって、それが本当にドットが粗い、8bit仕様なんですよ。それはアイコンというかシンボルとして表現する時に、もうちょっと解像度が高くて見栄えのいいやつが欲しい!という事になったんです。それで解像度倍くらいにしたんだっけ?
中村:縦横倍?
除村:それで、キャラクターとして少しかわいいバージョンを作って、両方ともたしていこうという形で今に至ったんです。ビデオでも8bitのサウンドを全面にだしたやつは昔の方のキャラクターを使ってます。
除村:さきほどライブでやったエレベータの曲とか、あれはぼくがビデオ作ってるんです。僕がやると凄く8bitなんですよ。そうなると昔の8bitバージョンになっていきます。
●完成形は音楽でなくたっていい
-今お話し聞いてて思うんですけど、「音楽を作ってる」という感じよりも「作品と音楽をトータルしてパッケージされたメディアを作ってらっしゃる」感じがします。それは意識してらっしゃるんですか?
YMCK:そうですね
-それは、完成系がライブっていうことなんですか?
栗原:完成系はいろいろなものを。どういうものであってもいいなって思っていmす。グッズでもいいですし。最初YMCKのルーツは音楽だったんですよ。だんだん8bitでいろいろなものをジャックしてこうってコンセプトで進んでいって、それがまあライブだったり……。
-まずアウトプットが音楽って決めてる訳じゃないんですね?
栗原:そうですね。
除村:音楽を常に中心において動きたいってのはあります。ただ、それだけに限らずって感じですね。そのなかのひとつがアプリであったりとか。
-あれもちゃんとしたYMCKの作品ということですね。
除村:はい
-間口が広いというかアウトプットの幅がひろいっていうのは戦略的な部分がある訳ですか?
栗原:最初は何も考えてなかったんですよ(笑)でも海外に行って言葉が通じなくてもすごいみんなが楽しんでくれたんです。音楽もそうだし、アプリも楽しそうに使っていただいてるのを見て音楽じゃなくても、いろんなことでとけ込めていったら面白いな、挑戦したいなって言う気持ちに変わっていきましたね。
中村:ファミコンというかコンピューターゲームというのが世界で共通言語になってるっていうのは確実にありますね。
除村:どこの国にいっても「Oh Nintendo」っていう反応なんですね。やっぱり、世界のみんなが、小さいときにファミコンとかで遊んで、その記憶が残ってて、そういうものがどこの国でも共通している。
栗原:でもオランダで「マッピー」が通じなかったです(笑)
除村:ちょっと衝撃でしたね(笑)オランダのライブのステージ「マッピーやる」って言ったらシーンってしちゃって、「えっ」て言う感じになっちゃって(笑)その後、「スペースインベーダー」って言ったらワーってなって。
栗原:その後、「テトリス」とかやったんですけど、お客さんは、その後「マッピー」が気になってしょうがなかったみたいで、最後は「マッピー!マッピー!」ってコールが起こったので、結局マッピーやりましたよ。
-海外に出て行くのに、共通言語になるものがモチーフとしてひとつ持ってるって言うのはすごくすてきなことですね。
栗原:今はインターネットで世界中の人と簡単にコンタクトがとれるので、それは大きいですね。
除村:そもそも最初に海外に行ける事になったきっかけがやっぱりネットなんですよ。最初にYMCKが8bitの曲を作ったときに、ホームページに貼っておいたんですよ。そしたら突然メールが来て「ネットで見たぞ」って話になって、あれよあれよといううちにライブが決まったんですよ。その感じでいろいろ始まって依頼ですね。
-表現方法のチャンネルが広がっている時代の中で、YMCKさんのスタンスっていうのはすごいはまっていますね。
●サウンド系の職業を志す人に
除村:今の音楽業界ご存知の通りかなり厳しい状況になってると思うのですが、知恵を絞って音楽業界という事に凝り固まらないで、幅広くアンテナを広げていけば?と思います僕らはそれを念頭においてやっていますので。
栗原:音楽に限らないことですが、完璧は目指さなくていいと思います。今自分にできることをとりあえず誰かに見せてみる。完璧を目指さずに、今の状態をアピールしていくことが大事だと思います。
中村:作品を作る時に、みなさん、楽しんで作って下さい。つまらない気持ちで作った物は何も伝わらないと思いますので。
-心強いエール、そしてステキなライブ。みなさん本当にありがとうございました。
[プロフィール]
YMCK
栗原 みどり:ヴォーカル/作曲
除村 武志:作詞/作曲/アレンジ/サウンドプロデュース
中村 智之:映像/作曲
男女3人から成る8bitミュージックユニット。
2004年に発売した1stアルバム「ファミリーミュージック」の大ヒットをきっかけに、幅広い世代の支持を受ける。また国内のみならず、フランス、スウェーデン、オランダ、米国、台湾、タイ、韓国等、8カ国以上で国際的なフェスやイベントに出演。映像と完全にリンクしたユニークなライブパフォーマンスは、世界的にも高い評価を獲得している。
CDリリース以外にも、楽曲提供、映像制作、リミックス、 DJパフォーマンス、ゲームサウンド・プロデュース、音楽制作ソフトウェア用の8bitサウンド・プラグイン「Magical 8bit Plug」やiPhoneアプリ「YMCK Player」の開発など、国内外において幅広い活動を展開している。
コラボプロジェクト:浜崎あゆみ/いきものがかり/DE DE MOUSE/東京女子流/小学館コロコロコミック「お菓子刑事」/米ケーブルチャンネル・ニッケルオデオン「YO GABBA GABBA」/バンダイナムコゲームス「太鼓の達人」/任天堂「PiCOPiCT」/SCE「塊魂TRIBUTE」/TX系アニメ「アラド戦記」ほか多数