「ユーリ!!! on ICE」スケートシーンの制作プロセスから学んだ
アニメクリエイターの創造性とチームワーク
2017/5/13(土)、人気アニメ「ユーリ!!! on ICE」制作スタッフを迎えアニメ業界セミナーが行われました。講演者は株式会社MAPPAからCGI部チーフの淡輪氏はじめ3DCGの申氏、撮影の大山氏と人事の福岡氏、さらにフリーランスアニメーターの立中氏という豪華な顔ぶれでした。セミナーの冒頭、福岡氏より株式会社MAPPAの紹介が行われました。「この世界の片隅に」の大ヒットでも知られる同社は現在72名が在籍。平均年齢は28歳の若々しい会社で、近年女性の入社が増え、男女比はほぼ半々とのことでした。
いよいよ学生たちお待ちかね、プロたちが語り見せるアニメーション制作のノウハウ紹介がスタート。多くのファンを魅了したフィギュアスケート・シーンの制作プロセスに沿った4部構成で展開されました。
スケートシーン制作プロセスは①実写撮影パート②3DCGパート③作画パート④撮影パートで構成。普通では見ることのできないアニメ制作段階の貴重な映像・画像をふんだんに交えてのワクワク感いっぱいのレクチャーでした。
実写編集パートは、本物のスケートリンクで契約プロスケーターが滑るシーンをさまざまなアングルで撮影。スケーターをカメラが追いかけるように撮られた映像が選ばれ、それを編集することでスケートシーンの基本となる素材が作られたことが淡輪氏から説明されました。
続く3DCGパートでは実写編集された素材をもとに、まず人物の動きを3DCGで作成。並行してアニメの世界で登場するスケートリンクを既存のさまざまな画像を参考にしながら作成し、人物と組み合わせ、スケーターが華麗なリンクで滑走するリアルなシーンを作っていきます。このパートを担当した申氏は、街路を人が歩く場面のアニメーションを使って、通り過ぎる自動車の大きさの変化で映像に奥行きを表現する手法などを紹介されました。
作画パートではアニメーターの立中氏が、何枚ものスケッチをサブモニターに映し出しながら、回転するスケーターの動きを「いかに美しく、自然に」表現していったかを解説。「時間がなくて、まさにホラーのように大変でした」と話しながらも、人間の動きを緻密に捉えアニメーションにしていく高度なプロのテクニックを丁寧に伝えてくださいました。特に映像の流れを切らないために「スケーターの髪の毛の流れを頭の動きよりも少し遅らせる」というテクニックは多くの学生にとって貴重なヒントになったことでしょう。
最後にマイクを握ったのは撮影パート担当の大山氏。アニメーション制作における「撮影」とは、動画と背景を合成したり、一つひとつの映像に微妙なニュアンスを表現する加工を施す作業で、アニメの仕上げのプロセス。スケートシーンでは「リンクの氷への人の写り込みや影を表現し、完成度を高めた」とのお話に、アニメーションが何人ものクリエーターによるチームワークの産物であることを改めて実感することができました。
セミナー終了後は学生の希望職種別に作品指導もしていただきました。
好きなことでメシを食ってやる、という強い志があればOK。
株式会社 MAPPA
CGI部部長
淡輪 雄介氏
アニメーション業界で長く活躍できるのは、作ることが本当に好きな人です。学生の間にいろいろ学び、作業する中で「好きだからこれでメシを食っていくんだ」という志を強くしておくことですね。プロがしのぎを削る厳しい世界ではあるけれど、信念があれば続けていけるし、自分から吸収していくものも多いはずです。アニメーションやCGはどんどん新しいものが生まれていく世界な
日本ならではの3DCGの世界を追求していきたい。
株式会社 MAPPA
CGI部/3DCG
申 在勲氏
3DCGはコンピュータを使ってやるものなので、数値という「正しいもの」がベースになりますが、アニメーションの3DCGは他とは違って「どううまく崩していくか」ということも大切で、そこが難しいところですね。 世界中で3DCGが取り組まれていますが、日本らしいというか「日本だけの気持ちよさ」みたいなものを追求していきたいですね。
「あっ、それいいですね!」と監督に言わせるのも僕らの仕事。
株式会社 MAPPA
CGI部/撮影
大山 佳久氏
アニメーションの撮影は、15年くらい前は合成を意味するコンポジットと呼ばれていました。パソコン上に背景やCG、キャラクターを置き、バランスが悪い時は加工したり、ないものを加味したりしてマッチングさせていく仕事です。監督の指示を実現していくのはもちろんですが、「(監督の)言葉になっていないこと」「言葉にできないこと」をも察知して「本当はこういうことですよね」と提案し、「あっ、それいいですね!」と言わせるのも僕らの仕事なんです。
オーソドックスなテクニックを大切にしています。
フリーランスアニメーター
立中 順平氏
アニメーションの作画で僕が大切にしているのは、昔から基本と言われているオーソドックスなテクニックです。具体的には「頭が描く軌道を正確に描く」「動きの緩急(slow in~slow out)」「誇張(ストレッチ)」、そしてセミナーで話した「髪の毛などの動きを遅らせること」です。よくできた作品はこの4つの要素が高いレベルで組み合わさっています。スポーツが好きで、野球を見ながらスケッチを描く、というのも僕はよくやります。
【関連リンク】
・株式会社MAPPA
・神戸電子専門学校 デジタルアニメ学科ページ
・神戸電子専門学校 3DCGアニメーション学科ページ
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