ゲーム音楽の巨匠とスクウェア・エニックスのプロデューサーが、
「ゲーム&ゲーム音楽の制作現場で起きていること」を徹底解説!
2017/07/30(日)、北野館のソニックホールで、作曲・音響効果などのサウンドクリエイトとゲームプログラムに興味を持つ学生を対象にした業界セミナーを開催しました。全世界で1億本以上を売り上げた「FINAL FANTASY(ファイナルファンタジー)」シリーズをはじめ数多くのゲーム音楽を手がける作曲家の植松 伸夫氏と、「FINAL FANTASY(ファイナルファンタジー)」や「半熟英雄」シリーズを手がける株式会社スクウェア・エニックスのプロデューサー 時田 貴司氏が登壇。
植松氏は、1994年度の日本ゴールドディスク大賞でゲーム音楽としては初の快挙となる「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞されているこの業界の第一人者。その後独立して株式会社ドッグイヤー・レコーズの代表となり、管弦楽のオーケストラによるワールドツアーを10年以上続けられていること、ファイナルファンタジー30周年記念のコンサートを年末に実施することなどを語り、ゲーム音楽として作られた名曲の数々が根強い人気を博していることを教えていただきました。
一方、時田氏がゲーム業界にかかわるきっかけは演劇活動の傍ら生活のために始めた「ゲームのグラフィックデザイナー」のアルバイト。デザイナーが時田氏ひとりという状況でありながら、当時のゲームの絵は「画面のます目(ブロック)を埋めるいわゆるドット絵」で、プログラマーに教わりながら技術を身につけたと語りました。
その後、時田氏が20歳の時に株式会社スクウェアに入社して間もなく、同社に在籍していた植松氏と出会われたそうで、当初から気が合い、一緒に行動していたとのこと。「植松さんからデモ音楽をいただくと私にインスピレーションが湧いて、ゲームに広がりが出てくることがよくあった」と時田氏。植松氏は「プロレスなどの趣味も合うので仲が良くて、一緒に弁当も食べました。時田さんは、やりたいことがはっきりしていて方向性をしっかり話してくれるので音楽を作りやすい」と語りました。
業界を第一線で走り続ける両氏共に思う「仕事に必要な事」とは?
さらに「ゲーム音楽の制作過程」「映像とゲームにおける音楽の違い」などのテーマでもお話いただく中で、仕事をするために必要なこととして2人が口をそろえたのは「コンセプトをしっかり立て、密にコミュニケーションをとること」。学生たちにとっては貴重なアドバイスとなりました。また、植松氏のライブ活動や、時田氏の仕事現場のようすを紹介いただく写真が大画面に映し出されると、学生たちは食い入るように見つめ、将来めざす仕事の環境をリアルに感じることができたセミナーとなりました。
自分の力を伸ばすには、壁にぶつかる勇気が必要。
作曲家
株式会社ドッグイヤー・レコーズ 代表
有限会社スマイルプリーズ 代表
植松 伸夫氏(写真左)
当初ゲーム音楽は使える音の数が3音しかなかった。クリエイティブをやる人間は不思議なもので、制限されればされるほど何とかしてやろうと思う。何でもできる方が自由で作りやすいと思うかもしれないですが、実は制限される方が工夫して作らなければいけない分、より力が発揮できる。使える音の数が8音になっても、もっと工夫できるかもしれないという思いで取り組んでいます。学生のみなさんにお話ししたいのは「やってもうまくいかないだろうな」と自分にストップをかけるのはやめようということ。これはとてももったいない。やりたいことは、まず全力でぶつかってみる。そこで壁に穴が開いたらもっと進めるし、押し返されて悔しい思いをしたことは必ず次へのバネになる。壁が怖くてなんとなくやっていると、ぶつかるときの痛みも悔しさも分からないので、それ以上伸びなくなってしまうんです。壁にぶつかる勇気を持ちましょう。
努力は、苦手克服よりも得意分野を伸ばすために。
株式会社スクウェア・エニックス
第8ビジネスディビジョン
シニア・マネージャー プロデューサー
時田 貴司氏(写真右)
私がゲーム業界に入ったのは、高校の頃から演劇に関わっていて東京で一人暮らしを始めたときに「ゲームのグラフィックデザイナー」のアルバイトを始めたことがきっかけでした。それからストーリー仕立てのゲームもできることを知って、演劇で学んだことを活かしたゲーム作りにやりがいを感じるようになったんです。クリエイターをめざす10人がいれば、それぞれ得意なことや苦手なことがあるのは当然です。その得意分野を徹底的に伸ばすことを考えてほしい。ただし、自分の力が認められるまであきらめず、その努力を続けることが大切です。そうすれば、ゲーム業界では何かのプロジェクトがあるときに、それぞれに得意分野をもったプロが集まって仕事をするという場面が多いので、自分の苦手なことは他のプロに任せて、得意分野に専念できる環境を得られる。学生のみなさんも、得意なことを伸ばすための努力のほうが、やる気が出るはずだと思いますから。