磨き上げた3Dスキルを武器に有名設計事務所で活躍する
神戸電子専門学校卒業生が凱旋!
2018/8/5(日)、北野館B1ホワイエにて建築・インテリア業界セミナーを開催しました。
講師は、神戸電子専門学校の卒業生でもある斎藤浩章氏。近畿大学卒業後に神戸電子専門学校の建築インテリアデザイン学科に入学し、卒業後は1年間大阪のパース会社に勤めたあと隈研吾建築都市設計事務所に3D担当として6年間所属。その後、日建設計デジタルデザインラボ室に所属し、国内外で様々なプロジェクトに携わっている3Dモデリングのスペシャリストです。
今回のセミナーでは、これまで斎藤氏が在籍した設計事務所で培ってきた3Dスキルについて実例などを交えながらお話いただきました。
中でも印象に残ったのは、隈研吾建築都市設計事務所に在籍していた時代の浅草文化観光センターの建築設計コンペの話。コンペ提出の必須条件にパースの提出が含まれており、1次選考では図面の提出は不要であったそうです。
確かに、図面だけで審査するよりも、その建築がどのような佇まいをしているのかを絵で見るほうが、完成形をよりリアルにイメージできるのは理解できますが、設計を審査するのに図面を提出しないというのは意外で、建築設計業界、特にその計画段階において3DCGがいかに重要であるかを改めて気づかされたお話でした。
しかし、この審査形式は別段珍しいものではないようです。特にヨーロッパなどでは新しく建築を設計する際、その建物が街の中でどのように見えるかを非常に気にされるらしく、コンペ時には建設予定地とその周辺が写った写真が支給され、そこに3Dパースを合成する形での提案を求められることが多いとのことでした。
もうひとつ興味深かったのは、斎藤氏がコンペなどで建築の3Dパースを作成する際は、絵としてのバランスを重視しているという点。建物が画面(紙面)の真ん中に大写しになるようなパースは大味になりがちで飽きやすく感じる、周囲の風景の中に建物がどうあるかを意識するのが良いとのことで、画像(紙面)を9分割したときに建物が1/9ぐらいに収まっているくらいが心地よいバランスになるのだそう。
このテクニックは昔先輩に教わったとのことでしたが、こういった部分は、かなり絵画的センスも必要だと感じました。
このように3D担当として隈研吾建築都市設計事務所で活躍していた斎藤氏ですが、次第に仕事の内容が3Dモデリング(立体物の形を計算し、形成すること)へと移行していったそうです。
そのきっかけは2009年ごろ。日本にグラスホッパーというツールが普及しはじめたことで、建築のモデリングが従来よりも簡単かつ感覚的に作成できるようになり、斎藤氏の仕事もグラスホッパーを使って設計の検討ツールをつくることが主になっていったのだそう。
つまり斎藤氏の役割は設計者の設計検討をサポートすることになり、斎藤氏が組み上げる検討ツールのおかげで、今までは膨大な時間をかけていた構造の合理性やボリュームなどの設計検討が、短時間で効率的にできるようになったのだそうです。
斎藤氏は、自分が検討ツールを組むことで、今まで設計者が1〜2週間かかっていた仕事が数時間で終わることもあり、そういったときの設計者の驚いた顔を見るのは楽しいと簡単におっしゃっていましたが、これまでの設計の仕方を変える発明ともいえる内容で、建築業界にとって非常に意義のあることだと、同席していた神戸電子専門学校の教員も高く評価していました。
そして2014年。もっとモデリングの仕事を中心にしていきたいという思いもあって、現在在籍している日建設計デジタルデザインラボ室に転職。
ここでのお話は、現在進行中のプロジェクトが多いこともあり、世界的に有名なサッカーチームであるFCバルセロナのスタジアム“新カンプノウ”の仕事など、公開出来る範囲で興味深いお話をたくさん聞かせてくださいました。
スタジアムなどの設計の場合には観客席からの視線の解析なども必要になり、見た目の美しさや強度だけでなくその建物の機能性や収益面のことまで考える必要があるとのことで、それらすべてに最適な答えを出しながら設計しているのだとのお話に、今更ながら驚きを感じました。
セミナーでは、3Dが建築設計の現場でどのように活用されているのかを具体的なプロジェクトの話を交えながら、長年日々の業務の中で身につけてきたノウハウを惜しげもなく披露してくださいました。
「3Dスキルを使って設計者にカルチャーショックを与えるような仕事をしていきたい」と語っていた斎藤氏の仕事に対する姿勢は、セミナーを聞いていた全員が刺激を受けたようで、建築業界および3Dに興味を持つセミナー参加者にとって、得るものが非常に多い講演であったと思います。
自分だけの武器を身につけ、磨き続けることが大切。
そうすればオンリーワンの存在になれる。
株式会社日建設計 3Dモデリングスペシャリスト
斎藤 浩章氏
設計も3Dもできる設計者がいる中で3Dを専門でやっている身として、彼らのはるか上をいく飛び抜けた存在になってやるという気持ちを持ち続けています。
これからも決して守りに入らず、新しいことを学び続けたい。
常に新しいことが起こり、日々進歩していく業界ですが、だからこそそれに乗り遅れないようその中で自分をどう活かせるかを考えながら、若い人たちからの突き上げも面白がって吸収できるくらいの気持ちを持って、仕事をしていきたいと思います。
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