映画やゲームで、爆発、煙、水の動きなどのダイナミックなFX(視覚効果)を手がける「FXアーティスト」。今回は、ハリウッド映画で活躍する本校の卒業生にインタビューを行い、その仕事の魅力や目指し方についてお話を伺いました。
神戸電子で学び、海外へ──
映画『キャプテン・アメリカ』のFXアーティストに
Digital Domain
FX Artist
坪井 琢磨さん
岡山県立水島工業高等学校出身
神戸電子専門学校 3DCGアニメーション学科2019年卒業
2018年8月に「株式会社Anima」の学生インターンに参加。それをきっかけに2018年11月から神戸電子在学中に同社にFXアーティストとして早期入社を果たします。
2019年11月までAnimaに在籍し、2019年12月より「株式会社Megalis」にFXテクニカルディレクターとして移籍。
2024年8月よりカナダに移り、現在勤める「Digital Domain」社でFXアーティストとして移籍します。同社での最新実績として、マーベル映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』に携わります。(2025年2月時点)
FXアーティストの仕事とは
生成AIによる、FXアーティストのイメージ
FXアーティストの仕事について教えてください
FXアーティストは、次のような特殊効果を作成する仕事です。
これらは、映画やドラマ、ゲームなどで使用されるものの一例です。マーベル映画などのSF作品では、アイアンマンやマイティ・ソーなどの戦闘シーンで飛び交うビームや雷なども作成します。
私自身は、さまざまな映画のFXを主に担当しています。例えば、
- 背景で燃える炎
- 嵐で荒れた海
- 手から発生する炎・稲妻
- 人から出る血しぶき
- キャラクターから発する光や煙
- 壁やものが破壊される様子 など
実際に手がけた主なプロジェクトは以下の通りです。
現在は、映画「マインクラフト/ザ・ムービー」に参加中です。(2025年2月時点)
坪井さんの近年のデモリール(映像作品集)
FXアーティストを目指したきっかけは何ですか
幼い頃、父がよく映画を観ていた影響で、私も映画が好きになりました。特にヒーロー映画を数多く観るうちに、「FX」に魅了されました。いつかは自分もこれらの作品のVFXを作りたいと思いました。そうやって、VFXアーティストを志すようになりました。
しかし、高校生になるまで、VFXがどのようなソフトで作られているかを知りませんでした。そのため、当時は動画編集・合成ソフトの「After Effects」などを使って映像制作をしていました。
FXアーティストとして働く中で、一番のやりがいは何ですか
FXは、絵コンテやプレビズ(簡易編集映像)を基に制作されます。その際、スーパーバイザー(監修者)やクライアント(発注者)からの修正指示に対応していくのが大変な点でもあります。
しかし、困難な修正を経て「出来が良い」と評価を得られたときは、非常にやりがいを感じます。
映画『The Nevers』のVFXは、Megalis社に入社後に初めて手がけた海外向け作品でした。この仕事では、他社から移籍してきた非常に優秀な方々と直接仕事をする機会を得られました。
また、『ONI ~ 神々山のおなり』という作品では、さまざまな工程を経験しました。
- アセットのデータ管理
- 映像レイアウト
- 特殊効果(FX)
- 制作の流れを構築するパイプライン
全ての工程に関わることができ、非常に印象に残っています。これらの経験は、自身のスキルアップに繋がり、大変貴重な体験となりました。
FXアーティストを目指す人たちへ
この仕事を目指すには、どんなスキルが必要ですか
3DCG業界としては、次のようなソフトのスキルが必要です。
- Maya(マヤ):モデリング(キャラクターなどの形を作る)、アニメーション制作
- Houdini(フーディニ):ライティング(光源や照明の設定)、FX
- Nuke(ヌーク):コンプ(映像合成の合成)
ソフトウェアのスキル以外では、常に「求められるものに対して柔軟に対応できる」ことが重要です。そのためには、自分の引き出し(映像のネタになるアイデア)を多くすること、そして、わからない時にすぐ聞ける「コミュニケーション能力」が必要だと思います。
専門学校で学ぶ際、どんなことに力を入れましたか
実は、神戸電子の3DCGアニメーション学科で主に学べるのは、MAYAを使った「モデリング」「アニメーション」です。さらに、AfterEffectsとPremiereを使った映像の合成・編集技術を学びます。
しかし、私が目指しているFXは、Houdiniというソフトで主に制作します。ですので、授業とは別に独自に学ぶ必要がありました。それでも、わからないことは先生にアドバイスをもらいました。
坪井さんの学生時代の作品
当時、周りの友達たちは「モデラー」や「アニメーター」を目指す人がほとんどでした。彼らは、必死に試行錯誤しながら、毎日作品を作っていました。自分とは別の方向ですが、がんばっている姿に日々刺激を受けていました。そうやって、自分も、とにかく多くの作品を作ることを心がけました。
最後に、これからFXアーティストを目指す人へアドバイスをお願いします
生成AIによる、CG業界での職種に悩む学生たち
CG業界を目指すなら、CG業界の中で何をしたいかを入学前に決めておくと良いでしょう。なぜなら、CG業界は次のように職種(工程)に分かれているからです。
- モデリング
- アニメーション
- FX(特殊効果)
- 映像合成・編集 など
また、2年制の学科では、就職活動は2年生の夏頃から本格化します。そのため、早い段階で目標を絞っておかないと、様々な分野に手を出してしまいます。そうすると、就職活動で必須となる質の高い作品集(ポートフォリオ)を制作する時間が不足してしまいます。
あとは多くの映画やドラマを見ておくことだと思います。とにかくインプットすることは非常に大事です。良い作品を観ておかないと、良い作品を作ることはできません。
専門学校に入ったら、その良い作品をまずは真似て作ってみることです。私も、多くの作品を真似て作りました。それらの多くの経験が、スキルとなって身につきます。
自分の目指す道を見つけよう!
CG業界には、モデリング、アニメーション、FX(特殊効果)、映像合成・編集など、さまざまな職種があります。どの分野を目指したいかを明確にすることが、スタートラインに立つための第一歩です。
神戸電子専門学校では、オープンキャンパスを通じてCG業界の様々な分野を体験できます。実際のソフトウェアに触れ、先生や先輩から直接アドバイスをもらうことで、自分に合った進路を見つける手助けになるでしょう。ぜひ一度、オープンキャンパスに参加してみてください。
次回の記事は、「海外で働くこと」についてフォーカスしてお届けします。海外での仕事環境や文化の違い、求められるスキルなど、気になる情報を深掘りしていきますので、お楽しみに!