最近のIT関連の話題で「生成AI」が多く見かけられます。その生成AIを使って、実際にチラシを作ってみました。2024年夏のイベントで実際に配布されたチラシ。一体、どうやって作っていったのでしょうか。
目次
急遽決定!今までになかったイベント!?
神戸電子では、7,8月に多数のオープンキャンパスを開催し、みなさんの進路選びのお手伝いをさせていただいています。そのイベント案内チラシも完成が近づいたとき「1,2年生向けにも何かイベントをしよう」という案が出ました。イベントを新しく開催するということは、当然その告知も考えなければなりません。そこで、その告知用にチラシをつくることになりました。
この時点でイベントについて決まっているのは下記の通り。
- 開催日程
- 内容は、職業についての紹介・質問イベント
- 各分野の先生たちが当日参加
- 申込は公式Webにて行う
イベントというものは、開催日までに告知期間が必要です。そこから逆算すると、2週間以内にチラシを完成させる必要がありそうです。
チラシなどを製作するお仕事、
それがグラフィックデザイナー
チラシを作るのに、載せられる素材がないこともあります。
新商品・初開催のイベントの告知は、いろいろ載せる情報がないことが多いです。初開催のイベントは、昨年の写真などでイベントの紹介をすることもできません。
しかし、素材がないときにさまざまな表現方法を考えて、手に入るものを上手に使い、できるだけ見栄えをよくするのもグラフィックデザイナーの仕事(醍醐味)でもあります。
素材がないときに使う手段あれこれ
こんなとき、グラフィックデザイナーは、提供される素材以外にさまざまな工夫を考えます。
- 文字の形やレイアウト(タイポグラフィ)を工夫する
- 制作物の色やレイアウトを工夫する
- 無料の素材サイト(写真やイラスト)を活用する
- 簡単なイラストやアイコン(マーク)を作ってみる
などです。
そこで、今回は新たな選択肢として「生成AI」を使ってみることにしました。
生成AIってどんなもの?
生成AI(ジェネレーティブAI)とは、大量のデータ(サンプル)からパターンを学習し、新しい情報やコンテンツを生成するAI(人工知能)の技術のことです。
近年の生成AIでできることは下記のようなものがあります。
- テキスト生成
文章で入力した質問に答えるほか、記事の要約、アイデアの項目出し、翻訳・文字校正なども行えます。 - 画像生成
文章からイメージされるものを、写真または3DCG・イラストで作成します。 - 音声・音楽生成
自然な声での読み上げや、BGM・効果音の作成も行えます。 - 動画生成
実写のような映像や、3DCG・手描き風のアニメの作成を行います。
いろいろ検討し、今回は画像生成で「Adobe Firefly」と「Copilot」を使用しました。
「Adobe Firefly」と「Copilot」
「Adobe Firefly」は、グラフィックデザイナーがよく使う「Photoshop」「Illustrator」というツールを提供している「Adobe社」から提供された画像生成AIです。ツールの中でも利用できるほか、単独でも使用できます。Adobe製品を利用している人は、無料で使用できることもポイントです。
「Copilot」は、Microsoft Windowsから提供されており、Windowsの基本ツールとして提供されています。ちょうど、このチラシを作る時から、画像生成も可能になったため試してみることにしました。
それでは、いよいよチラシ作りを紹介していきましょう。
チラシデザインって、どうやるの?
実際の制作工程を紹介!
1.決まっている内容から入れる情報を入れてみる(手描きのラフ作成)
素材がない、と言ってもイベントを開催するので、必ず決まっていることもあります。
- 開催日時
- 開催場所
- イベント名(おおよその名前)
- 1,2年生向けであること
- 対応いただく数名の先生
しかし、宣伝・告知を行うには、少し寂しい気がしました。
何か、イベントをイメージできるキャラクター・人物があった方が良さそうです。
また、私は背景を考えるのが苦手です。ですので、本校で学べる内容キーワードを並べた文字を背景にすることを思いつきました。
これで、チラシに必要な要素は揃いました。ここから、生成AIにも手伝ってもらうことにします。
2.チラシの配色やレイアウト案にも生成AIを活用してみました
今回、キャラクターの作成に生成AIを使うことに決めていました。しかし、チラシそのものを作ってもらえるならありがたいと思い、試してみました。
生成AIプロンプト
職業選びに悩む高校生のための、職業説明会
確かに、これは説明会自体のイメージ写真になりました。
しかし、今欲しいのは、チラシのデザイン案です。ですので、少しプロンプトを改良しました。
生成AIプロンプト
チラシ案。職業選びに悩む高校生のための、職業説明会。
そうすると、見出しやテキストを入れる場所ができました。先ほどより、少しチラシイメージらしくなりました。
もしかすると、チラシのサイズなども指定した方がいいのかもしれません。
生成AIプロンプト
チラシのデザイン案。チラシのサイズは、縦長A4サイズ。職業選びに悩む高校生のための、職業説明会のチラシ。色調は明るいトーンに。
ようやく、私にとってイメージしやすいいろんな案が出てきました。ピッタリというものはありませんでしたが、以下の要素は取り入れようと決めました。
- 配色は、派手な配色を採用。
- 背景にブルー。見出しなどにオレンジ・ピンクを採用
- キャラクターを真ん中に
- レイアウトは、元々考えていたものをほぼそのまま採用
ここで気がついたのが、生成AIも万能ではないということです。もちろん、プロンプトの精度を高めていくことで、より私のイメージに応えてくれるかもしれません。しかし、生成AIの活用は手段であって、目的ではないのでこれぐらいにしてみました。
3.キャラクターも生成AIで作ってみよう
次に、キャラクターも生成AIに描いてもらいます。
ここで重要なのがプロンプト(生成AIへの命令文)です。「いい感じの絵を描いて」でも、いい感じの絵は描いてくれます。
しかし、自分の目的にあった絵にはなりません。明確な指示、できればより詳細に指定することで、自分の意図にあったものが生成されます。
では、今回のチラシにあったキャラクターの要素を考えてみましょう。
- 高校生っぽい姿が望ましい
- 何かを探している様子 → 探す=双眼鏡
- 学びのために来て欲しい → メモを取っている
- 男の子にも、女の子にも来て欲しい
これを、プロンプトに置き換えると次のようなものになります。下のプロンプト文すらも、先ほどの箇条書きを参考にして生成AIに考えてもらいました。
生成AIプロンプト
高校生らしい男女どちらとも取れる学生が、何かを探すように双眼鏡を覗いているイラスト。学生はメモ帳とペンを持ち、観察しながらノートを取っている姿が描かれています。制服は日本の高校生らしいスタイルで、背景はシンプルにして学生の行動にフォーカスしています。表情は集中し、学びへの意欲を感じさせ、視聴者を学びの旅へと誘うようなイメージ。明るく親しみやすい色合いで、フレンドリーな雰囲気を出しています。
上記プロンプトから生成されたイラストは、こうなりました。
確かに、プロンプト通りに近いイメージです。ここから、さらに細かく指示をしていきます。
- 男の子と女の子、2人描いて欲しい
- 男の子は左側に配置。双眼鏡を持ち、左の方を向いている。
- 女の子は右側に配置。メモをもち、こちら側を向いている。
- 背景は白、もしくは透過。
このとき、Adobe Fireflyでの生成では、双眼鏡の持ち方や、目線などに違和感を感じました。そこで、Copilotでも同じプロンプトで指示をしてみると違和感はこちらの方が少ないと感じました。
そこから、さらに細かく指示を出して下のイラストに決定しました。
4.確認後、デザインソフトでレイアウト
キャラクターが決まったので、Adobe Illustrator(チラシなどのレイアウトデザインができるソフト)を使って、必要な要素を並べていきます。全体のイメージが見えると、さらに気がつくことがあります。
- 学校名を入れる
- 参加申込方法を入れる
- タイトルがただの四角で囲むだけなのは寂しい
- 先生にもっと「すごい人」感を出したい
そこで、タイトルの案も生成AIに考えてもらいました。
このイメージ全体を採用すると、いろんなものが増えすぎる気がします。そこで、「リボンの形」「キャラクターを円の中に入れる」というアイデアだけ採用しました。
先生に「すごい人」感を出すにはどうすればよいでしょうか?そこで、私は「すごい人=金メダル」という発想が浮かびました。では、さっそく金メダルも生成AIに作ってもらいましょう。
5.細かな修正をしていって、ようやく完成!
背景に、神戸電子で学べる内容を文字でたくさん入れてみましたが、あまりにも賑やか過ぎました。そこで、文字の色を薄くして、あまり目立たなく調整しました。
他にも金メダルの周りに縁をつけて、紹介文を入れる。リボンに沿って文字をアーチ状に変形する。などなども調整しました。
生成AIを使ってみて感じたこと
私が思っていたよりも、いろんなものを生成できるということがわかりました。ただし、自分の頭の中にあることをうまく伝えられなければ、AIもうまく応えてはくれません。それは、相手が人間であるときと同じですね。
アイデアを一緒に考えてくれる相棒としては、とても優秀であることも実感できました。ピッタリのアイデアを出すには、人間側も工夫が必要です。しかし、いろんなアイデアを次々と出してもらうには、非常に効率的です。
また、部分的な素材を作るのにも活用できます。効率的にできるので、別のアイデアを試してみたり、品質を高めるための作業に時間を割くこともできます。
「創って学ぶ」ための効率的なツール
神戸電子の教育ポリシーは「創って学ぶ」です。それは、小さなアイデアをどんどん実装して創ってみる、実践的なカリキュラムです。
今は変化が激しい時代です。1ヵ月かけて1つ案を作るより、1週間に1つ案を出して作り、いろんな人の意見も取り入れて次々生み出していく方がより良いものにしやすいこともあります。
そこに生成AIを活用し、どんどん試してみるのは1つの手法としては有効です。まだ使っていない人は、この機会に使ってみてはいかがでしょう。